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同性婚も事実婚も家族と証明できる制度を 
当事者らが京都府に要望

小川たまか・ライター|2023年9月28日3:13PM

 9月6日、選択的夫婦別姓と同性婚を求める当事者らが共同で、法改正などを求める要望書を京都府の西脇隆俊知事宛に提出し、府庁で記者会見を行なった。要望書は、府民環境部人権啓発推進室が受け取った。

要望書を提出する一般社団法人「あすには」関係者と、同性婚を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟の関西原告ら。(撮影/小川たまか)

 会見したのは、選択的夫婦別姓の法制化とジェンダー平等社会の実現を目標として8月に設立した一般社団法人「あすには」と、同性婚を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟の関西原告ら。要望書では、「1、選択的夫婦別姓と同性婚の法制化を岸田文雄首相に対して強く求めること」「2、同性・異性事実婚カップルも含めて『家族』証明が可能な『性別・SOGI(注)を問わないファミリーシップ制度』を京都府で創設すること」の2点を求めている。

「あすには」の前身、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は18年に発足し、地方議会が国会への働きかけや社会調査、全国での勉強会などの活動を続けてきた。今回、京都で要望書を提出した理由について、代表理事の井田奈穂さんは「地方の状況が深刻だと思うから。地方から女性が静かに離れている」と、男女格差の大きい地方都市で女性の人口が減っていることを指摘。同団体の北村英之さんは「(選択的夫婦別姓や同性婚を求めている当事者がいるのは)東京だけの話じゃない。各地域に当事者がいる」と力を込めた。今後は9月中に広島でも要望書を提出するなど、全国キャラバンを行なう予定という。

 8月22日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第7回全国家庭動向調査」では、選択的夫婦別姓に賛成する割合は全世代で61・0%となり08年の調査以降最高。また、「同性婚を法律で認めるべきだ」に賛成する割合は75・6%となり前回調査(18年)と比べて約6ポイント上昇した。

 要望書の中では、選択的夫婦別

姓への賛成割合が「結婚当事者世代」である29歳以下で75・8%、30代で76・3%と高いことや、単身(未婚)女性は85・3%が賛成していることを強調。「多様な家族を認めない現行制度が若年層の意識と大きく乖離しており、結婚当事者世代が自分らしく人生設計ができない問題」があると訴える。

世論と政策がズレている

「あすには」京都府在住メンバーで学校教員の田中めぐみさんは、出産後の職場復帰のタイミングで旧姓を使おうとしたところ男性職員から「事務のお姉さんにあなたのわがままで迷惑をかけているから謝りなさい」と言われた経験を語った。京都府では京都市や宇治市などで選択的夫婦別姓推進の意見書が可決されている。

 また滋賀県在住メンバーのゆみさんは、結婚時に自分の姓を選んだがパートナーの両親に大反対され落ち込んだという。説得はしたものの「私の姓で届くパートナー宛の郵便物を見る度に申し訳ないと感じる」と言い、別姓を望んでいる。ゆみさんは栗東市で活動を続け、同市ではゆみさんの請願を受けて全会一致で推進の意見書が可決された。滋賀県では栗東市を含め3市で意見書が可決されている。

 同性婚訴訟の関西原告で20年に京都市でパートナーシップ宣誓制度の第1号となった坂田麻智さん、テレサさんも会見に参加。「(制度をつくれば)幸せな人が増えるだけのはずなのに、議論さえ進んでいかない。賛成する人の割合は(同性婚が法制化されている)米国や台湾と同程度に高い」(麻智さん)、「(世論と政治トップの)ずれを感じていて、もっと直接声を届けることが重要だと思った」(テレサさん)と語った。

 政府からは「国民の周知が必要」といった言葉が繰り返されるが、井田さんは「国民の周知ではなく、国の制度が追いついていない」と訴えていくという。

(注)性的指向と性自認のこと。

(『週刊金曜日』2023年9月22日号)

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