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選択的夫婦別姓の実現とジェンダー平等目指す一般社団法人「あすには」

宮本有紀・編集部|2023年9月11日6:44PM

 選択的夫婦別姓を求めて2018年に活動を始めた選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの井田奈穂氏らが、この問題の解決のみならず、誰もが自分らしく暮らせるジェンダー平等社会の実現を目指して一般社団法人「あすには」を設立。8月21日に東京都内で設立会見を開いた。

記者会見に出席した「あすには」の理事ら。(撮影/宮本有紀)

「あすには」の代表理事となった井田氏は、「政府は少子化対策で官製婚活の予算を3倍にしたが、内閣府の調査で独身女性の3~4人に1人が『積極的に結婚したいと思わない理由』に『名字・姓が変わるのが嫌・面倒』を挙げている。現行法制で結婚できない若者が多いのに、その根本が正されず、少子化は進む」と、実態と政策のズレを指摘。「女性活躍と言いながら(民法や戸籍法など)女性の足を引っ張るような法律がずっと変わらずにきた。その理由に、1990年代以降、宗教右派によるバックラッシュが繰り返し起きていることが挙げられる。実際、今年の統一地方選でも、選択的夫婦別姓を阻むことを約束させる神道政治連盟の公約に多くの自民党議員が署名している」とし、「私たちはジェンダー平等なくして日本の未来はないという考えで、ジェンダー平等を『やってる感』ではなく実際に『やる』国にするために、法人化に踏み切った」と説明した。

「あすには」は、議会に訴える選択的夫婦別姓・全国陳情アクションチーム、社会を変えることを目指しSNS動画発信などで広報PRをするコミュニケーションチーム、人権教育や包括的性教育、お金に関する知識を伝授する金融教育などをする教育研修チーム、ジェンダー課題におけるメディアと市民の連携を目指すリサーチチームなど、7チームで組織化する。

なぜアクションとは一線を画したチームがあるのか。教育研修チームのリーダー、北村英之氏は「仮に選択的夫婦別姓が明日実現したとしても、ではそれで社会全体がジェンダー平等になるかというとそうではない。選択的夫婦別姓だけではなく、その実現後の社会を描いて研修事業をしていこうということになった」と解説。多様な分野のプロフェッショナルによる講座や当事者とつくるカスタム研修などを計画しているという。

すり込まれた家制度

教育研修チームの担当理事は、第二次別姓訴訟弁護団の事務局長だった野口敏彦弁護士。「日本では法教育が行き届いておらず、その代わりに常識や同調意識で動いている。法律が個人主義でつくられていても、実態はまだ家族主義がはびこっている」と指摘し、「日本人の無意識に潜む家族主義は、もとは天皇を頂点にした女性蔑視の家制度。これがかつては教育勅語ですり込まれた。教育ですり込まれたものは教育で改める。日本は男性優位社会だが、男性が幸せかというとそうではない。ジェンダー平等の横社会の価値を認識してもらいたい」と話した。

 メディアと市民の連携を目指すリサーチチームの担当理事となった元『毎日新聞』記者の吉永磨美氏は、「ジェンダーギャップ指数を毎年報道しているが、日本の順位の低さにはメディアにも相当な責任があると思っている。そもそもメディア自体が男性中心の同質性の高い世界でジェンダーに関して鈍感。そこを変えない限り社会は変わらないのではないかと思っている」と苦言を呈する。そして「言葉が人々の意識を造成する。発信する側はその覚悟でとりくまなければならない。たとえば結婚に関して『入籍』という言葉を使うが、家制度ではないので、いまは『入籍』ではない。表現が変わると意識も変わる。そういうことを伝えていければ」と語った。

「あすには」は「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」などとも連携し、25年までに選択的夫婦別姓の法制化を目指す。法人名には、ジェンダー平等社会へ「明日には」変えていきたいという思いが込められている。

(『週刊金曜日』2023年9月8日号)

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