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広島地裁、伊方原発運転差止請求訴訟 
四電の地震動策定方法を批判する専門家の証人尋問

哲野イサク(伊方原発広島裁判事務局)|2023年9月7日5:18PM

 広島地裁の伊方原発運転差止請求訴訟の7月31日の証人尋問は、いよいよ強震動研究のトップランナーの一人、野津厚氏(国立研究開発法人「海上・港湾・航空技術研究所」港湾空港技術研究所地震防災研究領域長)。野津氏はこの日のためにこれまで提出してきた意見書をひとまとめにしたスライド(甲198号証)を準備。四国電力側もいったんは甲198号証による証人尋問を認めた。野津氏のポイントは、強震動研究は発生した地震を説明できるレベルにようやく到達したが、耐震設計に使えるレベルには達していない、またよしんばそれを認めるにしても四国電力の手法は震源モデルの設定にしても、パラメータの選択にしても恣意(しい)的であり、科学的信頼性に欠ける、という点に尽きる。このことを具体的な観測データや2011年の東北地方太平洋沖地震で観測されたデータと整合する信頼性の高いモデルを提示しながら、四国電力の地震動策定のプロセスと結果を痛烈に批判した。この主張を凝縮したのが甲198号証だ。私たちシロウトでもわかる。おそらく裁判官たちにも理解できるだろう。はて四国電力はいかに反対尋問を展開するのか。午前中の主尋問120分はもちろんだが、私は午後の反対尋問120分も楽しみにしていた。ところが、四国電力は間際になって甲198号証による証人尋問を認めない、と言い出した。よほど甲198号証を潰したいらしい。

7月31日、広島地裁前の原告・支援者ら。(撮影/伊方原発広島裁判事務局)

 当日10時から主尋問開始の予定が急きょ進行協議。原告側弁護団も当然甲198号証による証人尋問の取り下げには応じない。30分の進行協議の結果、当日は主尋問だけに。四国電力の反対尋問は10月11日に実施となった。時間を稼いで野津証言対策をするつもりなのだろう。四国電力はこれまで、一般には非常に理解し難い強震動研究のプロセスや結果を振り回して、裁判所や世間を煙に巻いてきた。ところが今回の相手は強震動研究の専門家中の専門家である。煙に巻くどころではない。野津証言は四国電力にとって危険な爆弾である。

 次回の口頭弁論期日は9月11日10:30から早坂康隆氏の証人尋問を予定。本訴訟の詳細はウェブサイト参照のこと。

(『週刊金曜日』2023年8月25日号)

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