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若者特有の性や健康などの悩みに向き合う医療機関 
京都でユースクリニック開始

小川たまか・ライター|2023年8月16日1:31PM

 心身に不調を感じる若者世代は費用の心配や周囲に知られたくないなど医療機関にアクセスするハードルが高い。そんな状況に危機感を持った医師がこのほど、京都でユースクリニックプロジェクトを始めた。主催は産婦人科医の池田裕美枝さん、共催は太成学院大学看護学部の日吉和子教授だ。

7月26日のイベントで、コンドームの使い方をレクチャーする清水美春さん(右)。(撮影/小川たまか)

 ユースクリニックとは10代?20代の「若者特有の受診しにくさ」に配慮した医療機関で、海外では無料や低額で気軽に利用できる場所として広まりつつある。2011年に英国に留学した際、10代の健康を社会で守っていく意識について海外と日本の差を感じたという池田さんは「10代には特有のリスクがある。健康に対する危機意識が低かったり、自分の健康を過信していたり。また、体つきが変化しアイデンティティが確立していく中で自分がどう見られるかに敏感だし、性や恋愛の悩みも抱えている。けれどその悩みを親や先生など、身近な大人には知られたくないと思っている人も多い。でも今は相談先が中学・高校や大学の保健室しかない」と指摘する。

 7月26日には、池田さんが院長を務める「医療法人心鹿会 海と空クリニック京都駅前」で「生理」をテーマにした展示や漢方の試飲会が行なわれた。企画したのは京都市内の大学生らで、生理用品やデリケートゾーンのケアグッズを展示。また、滋賀県を中心に高校生にコンドームの使い方を教える活動を続ける清水美春さんが、参加者に琵琶湖のナマズをモチーフにした「びわこんどーむ」を配布するなど賑わった。

 参加した女子大学生は、池田さんの授業を大学で受け「生理や性に関する専門的な知識を得られて面白いと感じ、プロジェクトに参加したいと思った」と話した。

 日本国内でもユースクリニックの開設が続くが、初診時に親の承諾がなければ未成年への診療や処方ができないことから相談事業にとどまっている。親から虐待を受けている場合や親に知られずに緊急避妊薬を手に入れたい場合などにも、未成年が自分の意思だけで医療契約を結ぶことはできない。

 池田さんは「ユースが医療の専門家に気軽に質問や相談をできる場所として運営しつつ、医療現場と学術機関が結びつくことで多角的な視野を持って、今後何ができるかを模索していきたい」と今後の展望を語った。月に1~2回程度、クリニックでオープンイベントを開催する予定という。

(『週刊金曜日』2023年8月4日・11日合併号)

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