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広島市立中央図書館が駅前商業ビルに移転へ 
黒塗りだらけの決定プロセスに疑問

宮崎園子・フリーランス記者|2023年7月24日6:22PM

 世界遺産・原爆ドーム近くにある広島市立中央図書館を、広島市の第三セクターが運営するJR広島駅前の商業ビルに移転する市の計画案(2022年5月13日号、および「週刊金曜日オンライン」23年2月7日付記事で詳報)が23年3月に市議会で可決された。市議会は4月の市議選で改選されたことによって、改選前の前議会に提出された反対の請願は継続審議となり、事実上の廃案となった。しかし反対する市民たちは新議会にも請願を提出。内容や決定プロセスを問題視し続けている。

市民による情報公開請求に対しても黒塗りだらけの文書が。(撮影/宮崎園子)

 6月29日の広島市議会総務委員会。請願を提出した市民が、次々に趣旨説明の場に立った。

「『世界の広島』の文化とはこの程度なのかと残念でなりません」「もっと時間をかけて市民と行政がともに構想を練る場を作ってください」。元教員の女性は訴えた。

 緑豊かな中央公園内の現在地から、市の第三セクターが運営する築24年の商業ビルに移転するという内容に加え、いったん決まった公園内での再整備方針を急に変更した経緯に対し、多くの市民から反対の声が上がり、署名運動も起こった。22年3月、市議会は関連費を盛り込んだ予算案を賛成多数で可決しつつ「十分な議論が尽くされていない」として、「議会・利用者・有識者などの関係者に丁寧に説明」するなどとした付帯決議案を全会一致で可決した。

 だが、結論から先に言うと、最終的には今年3月、市議会にて商業ビルへの移転案は可決された。

 この1年間で何があったか。広島市が行なった市民意見調査では、現在地での再整備を求める声は商業ビルへの移転を求める声の5倍だった。だが市は「場所をどこにすべきかではなく、あるべき図書館の姿について聞くのが目的」などと主張。さらに、複数の有識者会議でも異論が示されたにもかかわらず「丁寧に説明した」と、会議開催をもって了解を得られたと突っぱねた。

 もっとも問題なのは、現在地か、商業ビルか、あるいは公園内の別の場所での整備かの3択を比較検討するはずが、公園内別場所案を経過を適切に示さずに市が「除外」したこと。付帯決議は三つの案を検討できる資料を示すことを求めたのに、比較検討業務を委託した業者の作成資料は開示せず、それをもとに「駅前商業ビル移転」という結論を導いた市の判断のみが議会で示された。

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