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公論形成委員会設置を提言 「どうする?原発のごみ全国交流集会」を札幌で開催

稲垣美穂子・フリーランスライター|2023年6月19日7:00AM

5月28日に行なわれたパネルディスカッションの模様。(撮影/稲垣美穂子)

 

5月27日と28日に「どうする?原発のごみ全国交流集会」が札幌市で開かれた。主催は原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、北海道平和運動フォーラム、原子力資料情報室。各地からのべ約600人が参加した。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の文献調査を受け入れた道内の寿都町、神恵内村の反対運動への連帯、他地域での文献調査の応募や申し入れの拒否などを目的に、パネルディスカッションや各分散会を通じて議論を展開。また、主催3団体は、原発のごみ処分方法の抜本的な見直しなどを含む「高レベル放射性廃棄物に関する提言」を発表した。

 同提言はまず、日本の高レベル放射性廃棄物政策が多くの誤った前提により推進され、それが政策失敗の根本原因になってきたとして以下(要旨)を指摘する。

(1)使用済み核燃料を再処理し、その過程で発生する高レベル放射性廃液をガラス固化して処分する核燃料サイクルの方針を堅持してきたが、1997年に完成予定だった再処理工場は稼働延期が繰り返され、いまだ見通しが立たない。また、再処理で取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料を原料とする高速増殖炉「もんじゅ」は2016年に廃炉が決定されるなど、現在の最終処分場計画は机上の空論にすぎない。

(2)00年制定の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」は最終処分を「発電に関する原子力の適正な利用に資するため」、すなわち原発の推進や継続的な運転のためのものと規定する。これにより原発推進の立場である経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)が公論形成を担うという歪な構造が生まれている。

(3)最終処分の方法として選択された地層処分は、四つのプレートがぶつかり合う日本で安定的な地盤を探して行なうことが困難。にもかかわらず、それ以外の方法を検討する余地を残していない。

(4)最終処分地選定に際し、地方自治体の首長が独断で応募できる現行方式では民主的な意思決定の担保が困難だ。

(5)現行制度では2年間の文献調査で20億円、その後の4年間の概要調査で70億円が自治体に交付金として支払われる。こうした金で釣る方式は地域内で住民の不信を広げ、混乱を助長するだけだ。

 そのうえで「原子力政策の大局的方針についての国民的合意が欠如したまま最終処分地選定という個別的な合意を得ることは無理」とした日本学術会議の提言(12年9月)にも言及しつつ、脱原発に向けた総量管理と長期保管のための研究体制の再構築や責任の所在の明確化、独立した公論形成委員会の設置などを求めた。

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