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これでいいのか徴用工解決策
韓国の被害者、世論はどう見ているのか? 

金 銀 智(キム・ウンジ)・『時事IN』記者|2023年4月19日5:20PM

「安保危機克服のため韓米日3者協力が重要」

 南官杓前駐日大使も同様の指摘をしている。3月7日、「共に民主党」の平和安保対策委員会会議に出席した南前大使は、こう述べた。「外交とは51対49の結果をもってして、互いに自国が51を取ったと言うのが交渉の一般的慣行だ。だが、今回の政府案を見ると、果たして韓国側は何を得たというのか。韓国政府が外交交渉でこのような姿勢と力量で対日問題にあたるなら、将来は実に暗いと言うしかない。それがさらに大きな問題だ」

 22年大統領選で尹候補が使って流行させた「よし、早く行け!」というセリフを地で行くような仕事ぶりに、韓国外務省内部からも不満が出た。

 尹大統領は今年の3・1独立運動記念式典の演説で、「複合危機と深刻な北朝鮮の核脅威など、安保危機を克服するための韓米日3者協力がこれまで以上に重要だ」と前置きした上、「(1919年の独立運動から)104年が過ぎた今日、(かつて)我々は世界史の変化に正しく準備できず、国権を喪失して苦痛を受けた」がゆえに、今は変化する世界史の流れを正しく読んで、「過去の軍国主義侵略者から、我々と普遍的価値を共有し、安保と経済、そしてグローバルなアジェンダで協力するパートナー」となった日本とよい関係を持つべきだ、という論理を展開した。

 その5日後に発表された強制動員解決策は、こうした尹大統領の世界情勢認識の延長線上にある。だが、その認識は正しいだろうか。南基正ソウル大学日本研究所教授は、尹政権が「韓・米・日vs北朝鮮・中・ロ」の構図に積極的に参入するのは危険だと指摘する。「インド、ベトナム、南米、ヨーロッパなどを見ると、非常に複雑な動きをしている。『民主主義対権威主義』という構図は、国際政治の現実というより仮想現実に近い。これに首を突っ込んでいるうちに、現実の生き残りゲームの中で不適応者になるのではないかと心配だ。我々は今、正しく世界を見ているだろうか?」

 政府の強制動員解決策の発表以後、大統領室は尹大統領の3月訪日、4月訪米というスケジュールを明らかにした。韓日と韓米の首脳会談を続けて行なった後、5月にはG7広島サミットに招待されて参加し、韓米日首脳会談を行なう計画を描いている。強制動員解決策はこの時期に合わせて発表されたというのが外交評論家の定説だ。解決策発表直後、米国のバイデン大統領とブリンケン国務長官は深夜に異例の声明を出し、歓迎の意を表した。3月6日、米戦略国際問題研究所(CSIS)は今回の尹政権の解決策について「韓日だけでなく米国にも利益になるだろう」とコメントした。

梁錦徳氏が自宅で強制労働に動員された女子学生の団体写真を指して説明している。(撮影/金興求)

 そんな中、被害者だけがまた「申し訳ない」と口にする状況になってしまった。3月7日、韓国国会で記者会見を開いた強制動員被害者の金性珠氏は、尹政権に対する恨みをかろうじて吐き出した。記者会見の最後に司会者から、最後に言うことはないかと問われると、金性珠氏は聴衆に向けてこう語った。「申し訳ありません。こんな気を使っていただき、ありがとうございます。私たちのために(みなさんが)長いこと苦労されたおかげで、こうして歴史について話もできます。日本は過ちを反省すべきです。なのに、少しも私たちに対してすまないと思っていません」

原文韓国語。翻訳/米津篤八(翻訳家)

(『週刊金曜日』2023年4月14日号)

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