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朝鮮人虐殺に言及した映像の上映中止 東京都は調査と謝罪を

北野隆一・『朝日新聞』編集委員|2023年3月25日6:39AM

要望書などを都人権部職員(左端)に手渡す飯山由貴さん(左から2人目)と明戸隆浩・大阪公立大准教授(同3人目)、ラッパーのFUNIさん(右端)。(撮影/北野隆一)

 東京都の委託を受けた外郭団体「東京都人権啓発センター」の人権企画展で映像作品の上映が中止された問題。作者で美術作家の飯山由貴さんらが3月1日、上映と経緯の調査、謝罪を求める要望書を、3万筆を超えるオンライン署名とともに都人権部に提出した。

 企画展は「あなたの本当の家を探しにいく」の題で昨年8月から11月、都の指定管理施設「東京都人権プラザ」で開かれた。上映が中止された作品は『In-Mates』と題する26分ほどの映像で、戦前の朝鮮人患者の診療録を読み解く内容。在日コリアンや朝鮮人強制連行の歴史に詳しい外村大・東京大学教授がインタビューに答え、関東大震災の朝鮮人虐殺について「日本人が朝鮮人を殺したのは事実」と述べる場面がある。

 この発言について、企画展の準備中だった昨年5月、人権部の担当職員が人権啓発センターに送ったメールで「都ではこの歴史認識について言及していません」と指摘。小池百合子知事が2017年以降、毎年9月1日に行なわれる朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文を送っていないことを挙げ、上映に難色を示していた。その後、センターから飯山さんに「都と調整した結果、作品の上映は困難」との結論が5月下旬に示された。

 飯山さんは10月28日に記者会見して上映中止について明らかにし、都の対応は「悪質な検閲だ」と批判した。出演者として記者会見に同席した外村教授は「関東大震災の際、何の罪もない朝鮮人が迫害を受け、虐殺されたことは、都の刊行する『東京百年史』にも書かれている」と指摘。そして「人権と名のつく行政組織が、社会的に弱い人々の生命を奪った行為について『問題だ』とはっきり言わず『そのような事実があるかどうかわからない』と言うことは、もはや自分たちは人権を侵害された人々の『味方』ではないと述べているのと同じだ」と批判した。

 飯山さんは11月22日、都議会で作品を上映。作品を見た都議らは「都人権部の人権意識はどうなっているのか」などと感想を語った。

 その後も、担当の都人権部から経緯の説明がなかったとして、飯山さんは昨年10月から呼びかけていた署名簿を携えて3月1日に都庁を訪れ、人権部の職員と初めて対面で言葉を交わした。大学などで作品を上映した際の学生の感想も伝え、改めて都人権プラザでの上映を求めた。しかし人権部は「個別の事案には対応しない」などとして、飯山さんらの要望を聞き置いただけで、経緯を説明する返答はなかったという。

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