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「報われない日々だったが追及を続けた」鈴木エイトさんにメディア・アンビシャス特別賞

山田寿彦・元『毎日新聞』記者|2023年3月19日7:00AM

鈴木エイトさん(中央右)や受賞者らによる記念撮影。3月4日、札幌市の北海道大学で。(撮影/山田寿彦)

 昨年1年間の優れた報道を市民の視点で選び表彰する「メディア・アンビシャス」の表彰式が3月4日、札幌市で行なわれ、統一教会問題の取材で一躍脚光を浴びたジャーナリスト・作家の鈴木エイトさんに「特別賞」が贈られた。

「メディア・アンビシャス」は2009年に結成された市民団体(代表は上田文雄・前札幌市長)。書籍を除く活字部門と映像部門を選考対象とするほか、ジャーナリスト活動全般を対象に「特別賞」を別枠で設けている。

 今回、鈴木さんは長年の取材の蓄積に基づくテレビなどでの的確な発信とブレない姿勢が高く評価された。表彰式で講演した鈴木さんは、安倍晋三元首相銃撃事件を契機に改めて浮き彫りにされた教団の反社会性や政治家との癒着に十分な関心を持ってこなかった大手メディアの責任を指摘。一方で「いま頑張っているメディアがあるのはうれしい。奮起を期待したい」と語った。

 鈴木さんが統一教会問題の取材を始めたのは約20年前。当初は街頭で手相診断やアンケート調査を装った教団の伝道活動に介入し、引っかかる人に入信を思いとどまらせることを「楽しむ」程度だった。やがて「カルトの信者は善意で悪事をなしている」という特殊な構造に気付き、調査と追及を本格的に開始。

 当時は霊感商法による深刻な被害が続いており、09年には警視庁公安部が教団の強制捜査に着手したがうやむやに終わり、教団は「責任逃れ」(鈴木さん)の「コンプライアンス宣言」でお茶を濁した。しかし、その後も教団による嫌がらせ、殺害予告などにめげず取材を続けた。

 やがて鈴木さんは、教団の支援を受けたり教団関連のイベントに参加したりする〝疑惑の政治家〟を追及し始める。安倍首相(当時)肝いりの人物が国政選挙で教団の支援を受けて当選したほか、教団幹部が首相官邸に招かれたりするなど、教団が反ジェンダーなどの思想的な共鳴も利用して安倍政権の中枢に食い込んだ実態をつかんできた。

『週刊朝日』を中心に執筆を続けたが反響は芳しくなく、「カルトの宗教2世」をテーマに企画を出版社に持ち込んでも「統一教会は旬じゃない」「インパクトが弱い」などの理由でまったく通らず、「報われない日々だったが追及を続けた」と振り返る。そんな状況が銃撃事件で一変した。

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