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原発回帰の動きに「黙っていられない」 「生業訴訟」第2陣“最終”追加提訴

滝口信之・『朝日新聞』記者|2023年2月8日7:00AM

2022年9月5日、「生業訴訟」第2陣原告らの入廷行動。(撮影/滝口信之)

 東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが国と東電に損害賠償を求めて福島地裁に提訴した集団訴訟(生業訴訟第2陣)は1月23日、新たに214人が提訴した。弁護団によると、追加提訴は今回が最後で、原告は計1846人にのぼった。

 同種訴訟をめぐっては、先行した生業、群馬、千葉、愛媛の4訴訟について、昨年3月に国の基準を超す賠償支払いを東電に命じる控訴審判決が確定した。一方で、最高裁第二小法廷は同6月、「現実の地震・津波は想定よりはるかに大規模で、防潮堤を設置させても事故は防げなかった」などとして国の責任を認めない判決を言い渡している。

 今回、生業訴訟の第2陣で追加提訴したのは事故当時、福島県大熊町や南相馬市、宮城県丸森町などに住んでいた住民だ。

 提訴した福島市の農家、佐藤紫苑さん(37歳)は昨年6月の最高裁判決を最高裁前で見守った。義父が原告で、国の責任を認める判決が出ると信じていたが、認められなかった。判決に「やっぱりな」と諦めてしまう気持ちもあった。

 震災後、農家の夫は収穫した野菜などが出荷停止になる経験をした。佐藤さんも放射線を気にして、当時6歳と3歳だった子どもをなるべく外で遊ばせないようにした。そんな経験を振り返るうちに、「おかしいことにおかしいと声を上げ続けることも大事だ」と追加提訴を決めた。

 岸田文雄政権は昨年末、原発の新規建設や60年超の運転を認めることを盛り込んだ新たな方針案をとりまとめた。

 佐藤さんは原発回帰の動きに「黙っていられない」と話す。そして、「私たちは賠償金がほしくて裁判をしているのではない。国と東電に原発事故の責任を認めてもらい、謝罪してもらいたいだけ」と訴える。

(『週刊金曜日』2023年2月3日号)

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