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政府の〝被曝者縛りつけ〟政策を批判

稲垣美穂子・フリーランスライター|2022年12月15日7:00AM

「福島原発かながわ訴訟」支援する会がセミナー開催

「福島原発かながわ訴訟」集会で講演する井戸謙一弁護士。(撮影/稲垣美穂子)

 福島第一原発事故により神奈川県などへ避難した人々が国や東京電力に対して損害賠償を求めた「福島原発かながわ訴訟」を支援する会が11月26日に横浜市でセミナーを開催。55人が参加し、「被ばくと住まいの人権裁判 集団訴訟の闘いで見えてきたもの」と題して、原発被害者訴訟に尽力する井戸謙一弁護士が講演した。

 井戸氏は講演で「ふくしま集団疎開裁判」「子ども脱被ばく裁判」「311子ども甲状腺がん裁判」「原発事故避難者住まいの権利裁判」の計4訴訟を紹介し、政府の〝被曝軽視政策〟を紐解いた。政府は福島事故後、平常時の被曝上限を年間1ミリシーベルトから同20ミリシーベルト(国際放射線防護委員会が示す避難指示基準の上限値)へ引き上げたことに加え、環境基本法を改正したため、未だに放射性物質の環境基準がない。

「放射性物質は『しきい値』のない毒物。この基準で生活すればガンで死亡するリスクは公害物質の環境基準に比べ7000倍になる」と井戸氏は説明。〝被曝者縛りつけ政策〟が国際的に準備されてきた中で、避難基準の引き上げを目指す日本政府は「事故直後から意図的に住民に少々の被曝をさせてでも可能な限り避難させないことを追求した」と分析。前記4訴訟はいずれもそうした誤った政策に対し市民が自己決定の前提となる正しい情報を知る権利や無用な被曝をしない生活をする権利を求めたものだが、井戸氏は原告らが国の政策の犠牲者であり「私たちがこの政策を標準化させれば世界の核被害への責任は重い」と訴えた。

 集会の冒頭で「かながわ訴訟」弁護団の小賀坂徹弁護士が同訴訟の裁判体が最近になって変わった件などを報告。「多くの原告の意見陳述をまったく聞いていない裁判長、裁判官が判決を書くことになる。非常に厳しい状況だ」と、一層の支援を呼びかけた(今後の裁判日程については下記参照)。

※第一陣第13回控訴審口頭弁論が12月16日10時15分から東京高裁101号法廷。第二陣第3回口頭弁論が来年1月12日10時半から横浜地裁101号法廷。ともに終了後に報告集会を予定。詳細は公式サイト(https://sites.google.com/site/fukukanaweb/home)参照。状況次第で変更の可能性あり。参加の際は要確認。

(『週刊金曜日』2022年12月9日号)

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