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同性婚訴訟 東京地裁判決は「違憲状態」と判断

飯田光穂・ライター|2022年12月10日7:00AM

「前進」だが課題残る内容

 しかし、判決は現状を「違憲状態にある」としながら、法制度の構築に「現行の婚姻制度に同性間の婚姻も含める制度とするのか、婚姻に類する制度とするのか、法的効果を現行の婚姻制度と全く同じものとするのかなどについて、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、また、子の福祉等にも配慮した上で、立法府において十分に議論、検討がされるべき」と、現行の婚姻制度に同性婚を含めない選択肢を立法府に提示している。

 これは白人と有色人種の人種隔離は「法の下の平等な保護」を保障する米国憲法に違反しないとした法原理「分離すれども平等」(1954年に連邦最高裁で覆された)と同様に思われる。同性婚か異性婚かで別々の選択肢を示すことは、異性愛者と同性愛者の婚姻は異なるものとする差別的な立法となる危険があるからだ。

 東京弁護団は今回の判決について、同性カップルが「パートナーと家族になり、共同生活を送ることについて家族としての法的保護を受け、社会的公証を受けるための制度が存在しないことは、その人格的生存に対する重大な脅威、障害である。個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとはいえず、憲法24条2項に違反する状態にあるとの画期的な判断を下した」と評価する。原告の一人、大江千束さんは「憲法24条2項に違反する状態と判断されたことは前進には違いない」と期待する一方、「立法府でどうなっていくのか複雑な思いがある」とも話した。

 原告らは控訴する方向で検討中という。弁護団は「地裁の判決は高裁で明確に『違憲』と言ってもらうためのステップ」「法制度がないことが違憲状態と東京地裁に言われたので、国会は動かないといけない」と主張する。これから判決が出る名古屋地裁や福岡地裁がどのような判断を下すのか、また国会が同性婚実現に向けて動くのかどうかが注視されている。

(『週刊金曜日』2022年12月9日号)

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