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立憲民主党の迷走 〈編集委員コラム 風速計〉 中島岳志

2022年11月11日7:00AM

 立憲民主党と日本維新の会が臨時国会で「共闘」を進めている。立憲民主党の泉健太代表は憲法改正を巡り、日本維新の会の立場は「(立憲と)そんなに差がない」と発言。「維新が掲げる憲法(改正)項目は、多くはそう対立せずに(済む)と思う」とも述べた。

 しかし、立憲民主党の掲げてきたヴィジョンや政策は、日本維新の会と正反対である。立憲民主党はセーフティネットの拡充を主張し、リスクを社会化する方針を示してきた。それに対して、日本維新の会は自己責任論を中核とするリスクの個人化を目指してきた。再配分をめぐる考え方は真逆と言ってよい。

 2017年の「希望の党」騒動を思い出したい。当時の民進党は、小池百合子東京都知事と組み、「希望の党」に合流した。当初は期待が沸き起こったが、次第に「希望の党」のヴィジョンの曖昧さが露呈すると、リベラルな野党支持者から「支持できない」「選択肢がない」という声が上がり、「枝野立て」という大合唱へと変化していった。これを受けて枝野幸男氏が新党を立ち上げ、「立憲民主党はあなたです」と言うと、各地で大きな熱狂が起き、衆議院選挙における立憲民主党の躍進が起きた。

 なぜ「希望の党」は国民から見放されたのか。それは、リスクの社会化を訴えてきた民進党議員が、リスクの個人化を進めてきた小池知事と組んだからである。真逆のヴィジョンの者同士が手を結ぶと、人々はそれを「野合」と見なし、コアな支持層から順に距離をとるのだ。

 立憲民主党は、「希望の党」の教訓を想起すべきである。「希望の党」の構造的失敗によって勢力を獲得した立憲民主党が、「希望の党」の失敗をなぞるような行動に出ることは、愚の骨頂と言ってよい。

 日本維新の会と組むことによって、リベラル勢力を応援するコアな支持層は、潮が引くように支持を撤回していくだろう。れいわ新選組の山本太郎代表は、両党の「共闘」について、「最悪の悪魔合体。悪夢でしかない」と語っている。与党と連立するわけでもなく、対立するわけでもない中途半端な政党を「ゆ党」と称するが、両党の握手は、まさに「ゆ党連合」と言えよう。

 これからは「与党勢力」「ゆ党勢力」「野党勢力」の三つに分かれることになるだろう。当然、政権交代は遠のき、喜ぶのは自民党だけだ。

(『週刊金曜日』2022年11月4日号)

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