知ってほしい 日本に生きる外国人の現実
編集委員コラム 風速計
雨宮 処凛
2022年9月9日7:00AM

この2年半、コロナ禍で困窮する人々の悲鳴のような声を聞いてきた。
「失業した」「家賃が払えない」「ホームレスになった」「もう3日食べていない」等々。
中でも深刻なのが外国人だ。日本国籍があれば生活保護の対象になるものの、多くの外国人は生活保護を利用できない(生活保護の「準用」がなされるのは、永住権・定住権等の在留資格がある人や配偶者など)。その上、健康保険に入っていないことから医療を受けられない人も多くいる。コロナ禍で何度か開催した「大人食堂」では、医療相談のブースに外国人たちの長い行列ができていた。多くの人が身体の不調を抱えているのに病院に行けずにいるのだ。
そんな現実があるのに、一部では「外国人は生活保護を受けやすい」などという大きな誤解が広がっている。一方でこの国の難民認定率は極端に低く、わずか0・5%(2020年)。背景にあるのは、外国人への無関心だろう。
そんな外国人の問題を網羅する本が最近、出版された。それが『外国人の生存権保障ガイドブック』(生活保護問題対策全国会議・明石書店)。
本書によると、日本にいる外国人は293万人で総人口の2%台。そのうちの47・5%が生活保護の準用の対象外で、国民健康保険に加入できない外国人は約10万3000人。そんな外国人の中でももっとも困窮しているのは、働くことを禁じられている「仮放免」(入管施設への収容を一時的に解かれている状態)の人々で、数にして約6000人。
さて、では日本にいる外国人が生活保護をどれくらい利用しているかというと、日本人96・7%に対して、外国人は3・3%。圧倒的に少ない。ちなみに海外の数字はというと、たとえばドイツでは、日本でいう生活保護を利用する人の中で外国人の割合は37・8%。フランスは12・4%。スウェーデンに至ってはなんと59・4%。もちろん、総人口に占める外国人の割合が日本とは違うわけだが、「最後のセーフティネット」はしっかり機能している。
また、外国人と言うと「犯罪」と結びつける人も多いが、本書では公的統計から見て外国人犯罪が増えている事実がないことも指摘している。
100人に2人が外国人という時代に欠かせない一冊だ。
(2022年9月2日号)