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福島原発刑事裁判、2月9日に高裁で山場 現場検証などの採否が鍵に

本田雅和|2022年2月7日9:18PM

【真実解明に必要な現場検証】

 指定弁護士らは控訴審においても現場検証の必要性を改めて強調。福島第一原発の施設が、高台の岸壁を海に向かって掘り込んだ地盤に建設されていることが現場では一目瞭然であること、津波対策として防潮壁を設置すべきだった場所や水密化工事をしておくべきだった箇所がすぐに理解できることから、裁判所が真実に迫るうえで現場検証は不可欠のはずだ。

 施設水没の結果回避措置の具体的内容とその実現可能性を追加実証するために元東芝・原発設計技術者の渡辺敦雄氏、長期評価の信頼性についての立証で、元気象庁地震火山部長の濱田信生氏と推本・長期評価部会長だった島崎邦彦氏の3人を証人申請している。

 科学ジャーナリストの添田孝史氏は「刑事裁判がなければ闇に埋もれていたことは数多くある」と言う。(1)過去の津波堆積物の調査などから869年の貞観地震並みの大津波は予測でき、東電以外の東北電力などでは津波対策を進めていた(2)東電も担当社員は「15・7mの津波対策不可避」で一致していたが、経営幹部は事故リスク回避より経営リスク回避を優先させ、津波対策を引き延ばした(3)武藤栄氏が対策を遅らせるために、土木学会で時間をかけて審議してもらうよう時間稼ぎと専門家への根回しを指示していた――などを、裁判で開示された東電の内部文書などから指摘している。

 被災者の一人、武藤類子・告訴団長=福島県田村市=は「このまま地裁判決が確定したら著しく不正義です。事故から10年、フクシマでは正義の通らないことばかり起きている。このような社会を未来の世代に残してはいけない。裁判所は正義を示してほしい」と訴える。

(本田雅和・編集部、2022年1月28日号)

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