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総選挙直前、与野党9党「移民・難民政策」アンケート 
技能実習生廃止などで違い明確に

西中誠一郎|2021年10月28日1:41PM

NPO法人移住者と連帯する全国ネットワークによる調査結果(2021年10月22日発表、公明党の回答は25日追記)より作成(「沖縄」は沖縄社会大衆党)。詳しくは https://migrants.jp/news/voice/20211017.html

総選挙を前にNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」が、与野党9政党に移民政策や出入国在留管理政策を問うアンケートを実施し、10月22日、ウェブサイトで公開した。非正規滞在者の扱いについて自民、公明、国民以外の各党は、退去強制手続きで原則全員を収容する「全件収容主義は廃止すべきだ」とし、外国人技能実習制度については立憲、共産、社民、れいわ、沖縄の5党が「廃止」に賛成するなど、各党の姿勢の違いが浮き彫りになった。

質問は(1)入管収容の制限設置と全件収容主義の廃止(2)在留特別許可の判断に子どもの福祉や家族が一緒に暮らす権利などを認めた国際人権基準を導入(3)在留カードの常時携帯と提示義務の廃止(4)生活保護の適用範囲の拡大(5)健康保険加入の拡大(6)外国人技能実習制度の廃止(7)入管法から独立した難民保護法の制定(8)永住・定住外国人の地方参政権(9)人種差別禁止法の制定(10)移住労働者の権利や文化的独自性を保障する移民基本法の制定(11)移住労働者権利条約の批准(12)裁判所とは別に政府から独立した国内人権機関の設置――以上、外国人の人権を守る立場からの12項目について賛否と理由を尋ねた。

回答結果は、自民が「賛成」はゼロで「反対」が(8)の地方参政権など5項目。残りはすべて「どちらとも言えない」で、「移民の人権保障に関して消極的もしくはあいまいな姿勢」と評価された。

自民は(1)で「全件収容主義を抜本的に改める」と回答しているものの、先の国会で廃案になった入管法改正案の再提出を諦めていない。また(3)では在留カードによる外国人の監視管理の強化を「必要かつ合理的」としている。

コロナ禍で2020年春以降、収容者の仮放免が相次いだが、在留資格がないために就労が許可されず、住民登録もできずに地元自治体の行政サービスの対象外とされた仮放免者の生活困窮が深刻化している。しかし、(4)生活保護(5)健康保険とも自民は「反対」だ。

立憲は7項目に「賛成」で他はすべて「どちらとも言えない」。先の国会では(7)の難民保護法案を野党6党会派で参議院に提出したが審議されなかった。また(10)には「どちらとも言えない」と回答し、代わりに多文化共生社会実現基本法の制定を目指すという。

与党内でも賛否が割れたのが(8)の地方参政権。自民は「反対」、公明は「賛成」。野党では立憲と国民が「どちらとも言えない」。共産、社民、れいわ、沖縄が「賛成」、日本維新の会が「反対」。

今回のアンケートを担当した安藤真起子・移住連事務局次長は「ウィシュマさん死亡事件などで入管法改悪反対の声が広がり、外国人の人権問題に無関心だった人々の意識が大きく変わった。立候補者も有権者も、選挙権を持たない移民や難民の切実な声を聞いてほしい」と訴えた。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、2021年10月29日号)

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