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滋賀県警、冤罪被害者を「犯人視」 
元看護助手による国賠訴訟で問題化した準備書面とは

粟野仁雄|2021年10月15日8:41PM

【刑事裁判でなかった主張も】

湖東病院では事件当時、72歳の男性患者が死亡しているのを、正看護師が発見した。滋賀県警は当時の看護担当の助手で「人工呼吸器のチューブを外した」と任意聴取に対して“自白”した西山さんを、1年余り後に殺人容疑で逮捕。動機は「職場での待遇への不満」などとされた。西山さんは裁判では否認したが、07年に懲役12年の判決が確定。満期服役後の17年8月に和歌山刑務所を出所した。

再審請求では同年12月、大阪高裁が、「男性患者の血中カリウム値が異常に低い」などとした医師の意見書を新証拠と認め、患者が不整脈で自然死した可能性が高いとして再審開始を決定。20年3月の大津地裁で無罪判決が言い渡された。

滝澤県警本部長は無罪確定後の昨年6月、西山さんへの全面謝罪を県議会で表明していた。

一般に終結した刑事裁判の結果をめぐる民事訴訟では、捜査当局が「当時の捜査に違法性はない」を主張して賠償を拒むことはあるが、刑事裁判の確定判決まで否定することは少ない。滋賀県警が今回あえてそこまで踏み込んで冤罪被害者を貶め、傷つけるのはなぜなのか。民事の法廷で再び「犯人」視する世論操作を図ったのではないか。

再審判決では、事件後の滋賀県警による取り調べ中に西山さんが担当刑事に恋慕し、気に入られようと虚偽自白をしたことが指摘されている。だが、問題となった準備書面で同県警は「取調担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害行為を自白するなど根本的にありえない」などと否定。西山さんが呼ばれてもいないのに警察署まで出向いたことも、「原告の捜査攪乱を図る生来的ないし戦術的意図から生じた奇異な行動に過ぎない」と、その人格を侮辱するようなことまで書いている。

これらについて井戸弁護士は「捜査の攪乱など刑事裁判にもなかった主張。証拠もなしに勝手な主張をするのは許せない」と批判する。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2021年10月15日号)

 

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