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ホームヘルパー国賠訴訟、原告が労働実態調査を実施 
「移動・待機に適正賃金を」

西村仁美|2021年7月16日5:22PM

調査結果を公表する原告の藤原路加さん(左)と伊藤みどりさん。(撮影/西村仁美)

登録型の訪問介護員(ホームヘルパー)3人による国家賠償請求訴訟に関連して、原告の藤原路加さん(65歳)たちが全国の同業者を対象に労働実態を尋ねる調査を実施。7月1日に東京都内で記者会見し、結果を公表した。

藤原さんたちは2019年11月、ホームヘルパーが労働基準法に反する劣悪な労働条件を強いられるのは厚生労働省が規制権限を行使しないからだ、として東京地裁に提訴した。これに対して国側は、事業所に適正な行政指導を行なっており、原告らの主張は事業所に向けられるべきとの主張だ。

そんな中、藤原さんたちは「私たちだけの問題ではない」として独自にアンケートを準備。女性労働問題に詳しい山根純佳・実践女子大学准教授の協力のもと、昨年7月~9月にオンラインや郵送で同業者らに要請。計683人から得た有効回答を分析した。

訪問先への移動時間に対する手当・給与が「支払われている」と回答したのは全体の70%だったが、そのうち半数近くは移動の距離や時間にかかわらず金額は一定(1件につき100円など)。また、複数の訪問先との間に生じる待機時間の給与は65%が「支払われていない」と答え、突然の日程変更で生じたキャンセル時間はそのまま「空き時間・待機時間になってしまう」とは51%が回答した。

厚労省は今年1月15日、各都道府県などに対し、事業主は移動時間や待機時間も含めて「適正に賃金を支払う必要がある」との周知徹底を図っている。藤原さんは「移動、待機費がそれぞれいくらになるか厚労省は責任を持って提示しなければならない」と指摘。もう一人の原告、伊藤みどりさん(68歳)は「専門知識を必要とする仕事をボランティアのような扱いでやらせていること自体が問題だ」と語った。裁判の次回口頭弁論(第6回)は7月20日13時15分から東京地裁709号法廷で開かれる。

(西村仁美・ルポライター、2021年7月9日号)

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