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富裕層の資産保有に「上限」を

高橋伸彰|2021年5月1日3:46PM

実際、マーケティングの研究で著名なフィリップ・コトラー(『資本主義に希望はある』)によれば、フランスでは14年に「年収100万ユーロ(日本円で約1.3億円)は誰にとっても十分な給料」だという理由で、100万ユーロ以上の所得に対する税率を75%に引き上げた。

また、「非常に裕福な人は、子どもたちが何でもできるほどのものを残せてしかるべきだが、子どもたちが何もしなくていいほどのものは残せるようにすべきではない」と言うウォーレン・バフェットの言葉を引用して、コトラーは富の集中を減らすためには500万ドル(同約5.3億円)を超える遺産には55%(15年当時のアメリカの税率)以上の相続税を課すことも選択肢の一つだと提言する。

日本政府はコロナ禍で悪化した財政赤字の補填策として、社会保障費のさらなる削減や消費税率の引き上げを目論んでいるようだが、税には経済的公平の実現という目的があることも忘れてはならない。

西欧や北欧諸国と比較し税による再分配効果が小さい日本では逆進的な負担増よりも、むしろ所得税の累進率や資産税の強化によって富裕層により多くの負担を求め、それによる増収分を教育や医療など各種の社会的支援に充てるべきではないか。 そうでなければ、格差の拡大はいつまでも止まらないのである。

(高橋伸彰・立命館大学名誉教授。2021年3月5日号)※大型連休にあわせて過去記事を掲載します。

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