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防衛大学校の虐待体質を司法が糾弾、国の責任認める 
福岡高裁

三宅勝久|2021年1月7日6:31PM

福岡高裁前で逆転勝訴を報告する原告の母親(右から3人目)と弁護団。(撮影/三宅勝久)

上級生らから度重なる暴力や精神的虐待を受けて防衛大学校(神奈川県横須賀市、國分良成学校長)を退学した元学生(本誌2019年2月1日号参照)が起こした損害賠償請求訴訟の控訴審(赤松秀岳弁護団長)で福岡高裁(増田稔裁判長)は12月9日、教官らの責任を否定した一審判決を変更、防大側に安全配慮義務違反があったとして慰謝料など約268万円の支払いを国に命じる逆転判決を言い渡した。「学生間指導」に名を借りた虐待が横行し、自殺も頻発する防大を断罪する歴史的判決だ。

原告のAさんが防大に入学したのは13年4月。中学生時代に陸上自衛隊の災害派遣活動を間近に見たのがきっかけで自衛官を志し、実現した夢だった。しかしそこで待っていたのは、連日各種のいじめを受ける陰惨な世界だった。殴る蹴るの暴力、不在中に自室をかき乱す「台風」「飛ばし」という嫌がらせ、ささいなことに難癖をつけて罰点を加算し、意味不明の罰ゲームを課す「粗相ポイント」制度、深夜全裸で腕立て伏せをさせられる、乾麺にわさびをまぜて短時間で食べさせられる、食べた直後に腹を踏まれる、下腹部に消毒用アルコールをかけて点火して陰毛を焼かれ、カミソリで剃るよう命じられる、性器を電気掃除機で吸引される――。

そして、これらの犯罪的な行為の数々を教官は見て見ぬ振りでやりすごし、黙認した。下級生は軒並み被害に遭っていたが、Aさんは特に集中砲火を浴びた。「粗相ポイント」の罰ゲームとして風俗店行きを要求されたことがある。それを拒んだのが理由らしい。

卒業するためにAさんは懸命に耐えていた。だが限界がある。やがて健康に不調をきたす。療養が必要だとの医師の判断で2年生の夏から休学を余儀なくされた。療養中でもいじめは止まなかった。Aさんの写真を遺影に見立てた「工作物」を学校内の行事で展示した。さらに藁人形などの大量の不快な画像を携帯電話に送信した。結果、Aさんは自死を考えるほど追い詰められ、やむなく退学する。

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