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大林宣彦監督死去 
戦争への嫌悪、映画への愛貫く

阪清和|2020年5月8日4:49PM

『花筐/HANAGATAMI』公開前の2017年11月9日、日本記者クラブで会見した大林宣彦監督。(撮影/阪清和)

『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』から成る尾道三部作などの青春映画で知られる大林宣彦監督が4月10日、肺がんのため亡くなった。82歳だった。自宅にあったおもちゃの活動写真機と戯れていた幼少時から、8ミリカメラによる自主製作映画作りに明け暮れた大学時代、3000本もの作品を制作したCMディレクター時代、そして数々のファンタジックな名作を連発した映画監督としての輝かしい時期に至るまで、まさしく映像の美と魔力を追求し続けた生涯だった。亡くなった4月10日は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で封切り日が延期された最後の監督作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』の当初の公開予定日。「130歳まで映画を作ろうと思っています」との願いは叶わなかったが、ファンとの新たなきずなを少なくとも一つ遺してくれたことは間違いない。

大学時代から国際的な注目を浴びていた大林監督は1977年に『HOUSE/ハウス』で劇場用映画デビュー。助監督経験も撮影所勤務経験もないCMディレクターの監督作品に対する業界からの冷めた視線を、そのポップな色彩と自由な発想が詰め込まれたファンタジックホラーという斬新な方向性で一蹴し、映画界に新しい扉を開く衝撃的な登場となった。

しかし大林監督の真骨頂が示されたのは81年に『ねらわれた学園』でアイドル映画の枠を大きく拡張した後に、自身の故郷・尾道を舞台にして撮影した尾道三部作『転校生』(82年)、『時をかける少女』(83年)、『さびしんぼう』(85年)だった。詩情豊かに漂う郷愁と、ファンタジックな設定が生む浮遊感は、幅広い年齢層の人々を魅了。その人気を決定づけた。

その後も『異人たちとの夏』や『青春デンデケデケデケ』のヒットで活躍を続ける大林監督に生前の黒澤明監督は「あと400年命があれば俺の映画で必ず世界を平和にしてみせる。映画にはそういう力と美しさがあるんだ。でも俺はもう80歳でそろそろ死ななきゃいけないから、大林君、君がその続きをやってくれ。俺たち(の世代の監督)も小津安二郎さんやウィリアム・ワイラーさんらの続きを一生懸命にやってきたんだ」と日本映画界の未来を託されたという。

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