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湖東記念病院事件、西山美香さんに再審無罪判決

粟野仁雄|2020年4月30日11:48AM

再審無罪判決を喜ぶ西山美香さん(左)。(撮影/粟野仁雄)

「裁判長があんなこと言ってくれると思わなかった。嬉しかった」

3月31日正午過ぎ、支援者が待つ大津地裁の門前で語る頬に涙が伝った。2003年5月に湖東記念病院(滋賀県東近江市)で当時72歳の男性患者を、呼吸器を外して殺したとされ、12年間を刑務所で過ごした元看護助手の西山美香さん(40歳)が雪冤を果たした。

かつて1995年の大阪市東住吉区における小学女児焼死事件で殺人罪に問われた青木惠子さん(2016年に大阪地裁で再審無罪判決)の場合は、火災事故を放火殺人にされた。だが湖東記念病院の冤罪は患者の自然死の可能性がある件を滋賀県警と大津地検が殺人に仕立てた。その青木さんに「獄友」とからかわれて花束を渡された西山さんに笑顔が戻った。

午前10時半、潔白を示す白い服を着た西山さんに大西直樹裁判長は「主文、被告人は無罪。もう一度言います。西山さんは無罪」と言い渡した。長い判決文朗読で「自然死の可能性が高い」「事件性すら証明されていない」「恋心を利用した刑事の誘導」などと捜査側を厳しく断罪、自白の信用性も任意性も否定した。

朗読を終えた後で大西裁判長は「嘘をついた(虚偽自白)ことを後悔し気に病んでいるかもしれませんが、問われるべきは捜査手続きの在り方です。嘘偽りのない西山さんを多くの人が支えてくれた。もう嘘をつく必要はありません。等身大の自分と向き合い自分を大切にしてください。今日がその第一歩です」(要旨)と優しく言葉をかけた。西山さんが子どもの頃からつまらぬ嘘をついて友達の歓心を買おうとしていたことにまで言及した若い裁判長の目は真っ赤だった。車椅子で入廷し傍聴席の最前列で泣き腫らした目の母、令子さん(69歳)は「裁判長、ありがとうございました」を繰り返し、父の輝男さん(78歳)も感無量の表情だった。「布川事件」の櫻井昌司さんは閉廷後「俺の時(11年に水戸地裁で再審無罪判決)はあんな言葉なんもなかったよ」と羨ましそうだった。

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