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「甲州選挙」の暗部 自民・山梨県議が「公選法違反」か

岩本太郎|2019年11月15日12:08PM

【「金丸道路」をめぐる利権も?】

その自然豊かな環境に憧れて都会からの移住者が多い北杜市だが、神谷さんもその1人だ。かつてイギリスを旅行した見た本場の英国庭園を参考に自らデザインしたという現自宅の庭はガーデニング雑誌などでもしばしば紹介されるほどの見事な景観を誇る。

ところが後に、せっかく作ったその自宅が、国土交通省が建設計画中の中部横断自動車道(長坂~八千穂間・34キロ)のルート上にあることが判明する。移住前に市役所や不動産会社からそんな話は何も聞かされていなかったという神谷さんは行政に何度も情報公開請求を行なうも、道路が計画された1987年当時の議事録は「不存在」。直談判した当時の白倉政司・北杜市長からは「勉強不足だ」とあしらわれた。一方、調べるうちに同道路が地元出身代議士で自民党建設族の故・金丸信元副総理にちなんだ「金丸道路」と呼ばれていること、さらには建設ルート上に前記の浅川力三氏や白倉政司氏(金丸氏の元秘書)ら地元出身の政治家が所有の土地があることを知る。つまりバブル期に策定された建設計画(総額2000億円を超えると言われる)を、30年以上たった今も地元出身の政治家が自らの利権絡みで推進しているのではないか? というわけだ。

当然、神谷さんのみならず、同市の自然に憧れて移住してきた人々からは計画への反対の声が上がっているのだが、北杜市や国交省はけんもほろろの対応。他方で、神谷さんがこの件に関して国交省の甲府河川国道事務所長に送った内容証明郵便は無断で山梨県の県土整備部高速道路推進課に個人情報も伏せずに転送されたほか、8月に同市で行なわれた同道路の建設説明会に姿を見せた浅川氏は、会場ロビーで話しかけた神谷さんに対し、上記の二連ポスターについて神谷さんがSNSで批判したことについて「訴える」と凄んだそうだ。

こうした地元政治家が絡んだ道路利権絡みの話題は全国はもとより地元メディアもおいそれととり上げないだけに醜悪な実態が世間に知られないまま進行しがちだ。だが「あのポスターは北杜市民なら誰しも浅川氏の選挙活動だと認識しているはずです」と神谷さんは言う。「しかし選挙ですら『甲州選挙』と呼ばれて地元の上下の人間関係に縛られるこの地では『御上』にもの言わず、あえて蜂の巣をいじろうとしない市民をいいことに平然と選挙違反をするケースが後を絶たない。でも私は間違いは間違いと正したい」。

筆者からも浅川氏に書面で問い合わせたが、10月21日時点でまだ回答は得られていない。今回の告発からどのような「真実」が明るみに出るか。要注目だ。

(岩本太郎・編集部、2019年10月25日号)

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