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性被害の訴え阻む「時効」の壁 
性被害と気づくまで20年かかった

武馬怜子|2019年11月6日7:13PM

4月26日、第1回口頭弁論後に取材に答える石田さん。(撮影/武馬怜子)

【「大学生ならわかる」?】

今年2月、石田さんは教諭からの性被害によりPTSDを発症したとして、当該教諭と札幌市教育委員会を相手どり約3000万円の損害賠償請求を行なった。

今回、裁判を行なうにあたり、まず争点となったのが「除斥期間」だ。これは「一定期間権利を行使しないことにより、その権利を失う」制度だ。不法行為による損害が発生してから20年を経過しているか否かが争われた。

原告である彼女がPTSDを発症した2016年を期間の起点としているのに対して、被告側は性被害を最後に受けたとされる(被告側は性暴力自体を否認している)1997年7月を起点と主張していた。

「原告らの請求を棄却する」

8月23日、東京地裁510号法廷で、田中秀幸裁判長は判決を読み上げ、石田さんの第一審敗訴が決定した。その瞬間彼女はジッと目を閉じた。そして口を真一文字に結び、表情を変えることはなかった。

判決文には、「被告教諭との性交渉を重ねていた平成9(1997)年当時、北海道大学の大学生であって、一般的な理解力に欠けるところがなかったばかりか、被告教諭との性交渉を伴う男女関係が続いていた当時からこのことに罪悪感を抱いており、(略)このような原告石田自身の認識、行状等も併せ考慮すれば、原告石田は、被告教諭による当該行為(性交)の性的意味をその当時から十分理解していたことがうかがえる」「児童買春の裁判傍聴は、被告教諭に対する処分ないし処罰を求めようとする契機となったということができるにとどまり、(略)裁判傍聴をするまで(略)誤解が解消されることなく続いていたとは考え難い」などとある。

「性被害を受けて育ち、そもそも健全な性的な知識とか感覚を持てていないのに、『大学生になったらわかるでしょ』は、かなりおかしい。しかも性被害と認識していたかどうかは除斥期間と関係ないのに」と石田さんは憤る。

「普通の男女関係ではなく、教員との信頼関係を利用してそういう関係に持っていかれたのに。そのことを裁判で問いたかったのに乱暴な判決だと思う」と話した。

石田さんの代理人、小竹広子弁護士も「大きくなり性的な意味がわかるようになったからといって、すぐに自分の被害に気づけるわけではない」と残念がる。

判決はさらにPTSDについても「機能の障害を引き起こしていたともいい難いから診断の正確性には疑問を差し挟む余地がある」と、医師の診断を疑っている。3年分のカルテを提出し、被告も彼女がPTSDであることを否定しておらず、この点では争っていないにもかかわらずだ。石田さんは判決を「除斥期間と関係ないことまで勝手に判断しており、差別的だ」とし、9月6日に控訴した。

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