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「喪失」と「再生」の歌

小室等|2019年4月29日7:00AM

小学生の智くんは、実家(神戸)の近くの小さな山のふもとで、満月と流れ星を見た。
「宇宙はすぐそばに、手の届くところにある」

中学生の智少年は、「スカボロウフェア」のせつない歌声とハープシコードの高音のハーモニーに、銀色の光輝を見た気がした。
「『音』には色彩があり、きらめきがある」

「光」と「音」を失った高校生のころ、智青年はいきなり自分が地球上から引きはがされ、この空間に投げ込まれたように感じた。
「……私は限定のない暗黒の真空の中で呻吟していた」

全盲ろう状態の失意のうちにいるとき、友人が手のひらに指先で書いてくれた。
「しさくは きみの ために ある」

あらたに立ち現れた「言葉と思索」の世界。
「宇宙空間のような盲ろうの世界に、『言葉』だけが清かな光芒を放っていた」

福島さんは生還したのだ。

福島智さんは、同じ境遇のヘレン・ケラーを引き合いに、ヘレンと自分とでは、「人生経験における重要な部分が質的に大きく異なっている」。それは「一言でいえば、ヘレン・ケラーの人生は、『覚醒』と『成長』の歩みである」のに対して、自分の人生は「『喪失』と『再生』」の経験であると言う。

できあがった作品は、まさしく「喪失」と「再生」の歌。

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