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阪神・淡路大震災から24年間鳴り響いた「鎮魂のトランペット」

粟野仁雄|2019年2月8日4:38PM

追悼行事でトランペット演奏する松平晃さん。(撮影/粟野仁雄)

鎮魂の空に最後のトランペットが響いた。阪神・淡路大震災の発生から24年。1月17日未明、相次ぐ追悼行事の終了や縮小の象徴となる風景があった。

神戸市の夜景が見下ろせる諏訪山公園・ビーナスブリッジで毎年行なわれた「早朝追悼のつどい」は主催者らの高齢化で今回が最後となった。実行委員会(安田秋成委員長)が「急で長い階段が凍結時などに危険。準備も負担」などとして昨年11月に終了を決めた。

発生時刻の午前5時46分。運び上げた鐘の音とともに参加者が黙とう。川崎市在住のトランペット奏者、松平晃さんが『花の街』(團伊玖磨作曲)を演奏した。会社員だった松平さんが休日に全国で演奏活動をしていた1995年1月、連休に神戸で演奏し、川崎市に戻った翌朝に大震災が起きた。

テレビで線路が消えているのを見てぞっとし「一歩間違えば自分の命も」と思ううち、神戸市民から「追悼行事で吹いてほしい」と声がかかる。「励ましになれば」と99年から演奏を始めた。松平さんはこの日、「『花の街』は戦後の焼け跡時代に作詞家の江間章子さんが神戸の街をみて作ったと言われ、ふさわしい曲だと思いました」と話し、『ふるさと』『上を向いて歩こう』を吹くと参加者も合唱した。

街並みを見下ろした松平さんは「最初はもっと暗かった。どんどん灯りが増えました。今後も神戸には来ますが、誰かが引き継いでくだされば」と話していた。

元日本共産党の兵庫県議団団長で今も借り上げ住宅問題などに尽力する93歳の「闘士」、安田さんは「天国の人たちに、神戸はここだよと教えてくれる音色だった。ありがとう」と感無量の様子で握手していた。

追悼行事は震災20年目以降半減した。真冬の早朝行事が主催者や参加者に負担となり、日中に変更するケースも増えた。とはいえ、起きている市民が多い時間がいいかもしれない。暗く寒くて辛い時間帯に無理にこだわることもない。風化は工夫で防げる。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2019年1月25日号)

 

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