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『宮古新報』社長、労組に会社清算通告 
自身のセクハラ・パワハラ疑惑は

斉藤円華|2019年1月29日11:18AM

記者会見に臨む新聞労連の南委員長(右)。(撮影/斉藤円華)

「このままではまともな紙面が作れない。セクハラ、パワハラを繰り返す社長は退陣せよ」

『宮古新報』(沖縄県宮古島市)の労働組合が、同社の座喜味弘二社長(87歳)に退陣を求めている。社長が長年にわたり従業員にハラスメントを繰り返す中、編集長が社長と対立して昨年10月に辞任。これを発端に労組が決起した形だが、社長は今年1月9日に突然、「明日をもって会社を清算する」と組合に通告してきた。

【「人権侵害が継続」】

「社長はワンマン経営のもと、従業員を長年にわたり使用人のように扱ってきた」。労組が加盟する日本新聞労働組合連合(新聞労連・東京都文京区)で9日夕方に開かれた緊急会見の席上、南彰・中央執行委員長は訴えた。

「この状況が黙認されれば地域住民にも良くないし、何より従業員への人権侵害だ」(南氏)

1968年創刊の『宮古新報』は宮古島で『宮古毎日新聞』と並ぶ日刊紙。8面~10面の朝刊を大手紙と同じブランケット判で発行し、同社によれば発行部数は約1万2000部を数える。

半世紀もの歴史を重ねる地元紙だが、創業者の社長とその親族が経営陣を占める。また、社長はANA(全日本空輸)の代理店「エアー宮古」の会長でもある。

社長が繰り返してきたというハラスメントは、組合が指摘しただけでも多数にのぼる。

同労組によると、セクハラでは、▼女性社員に社用車を運転させ、その際、不必要に体を触る▼業務と無関係なアダルトグッズを通販で会社に届けさせる。それを女性社員に開封させ、社長室に届けさせる▼社長の身の回りの世話を従業員にさせる中で、社長のアダルトグッズについても整理や電池交換などを指示した。

またパワハラでも▼業務中、従業員に対して突然激高して大声でどなる▼従業員を突き飛ばし、胸ぐらをつかんだり、拳を振り上げてみせたりする▼人事異動の強要や退職勧奨、など。

ところが同社労組幹部によれば、社長は自分が社内でハラスメントを重ねてきた事実を認めていない、とのことだ。

【労組は発行継続を模索】

労組は2010年1月に発足したが、社内で少人数だったために社長のワンマン姿勢やハラスメントを是正できなかった。ところが、紙面制作や労務担当を担い信頼されていた前編集長の辞任で、社内の不満は頂点に。現在14人いる従業員のうち、1人を除いて全員が組合に参加している。

労組の社長退陣要求を前に会社側は、2018年12月15日の団体交渉で「社長が新聞経営の意欲を失った」として社長退任と事業売却を提案。これを受け、新聞発行の継続に向けて県内の企業と事業譲渡にむけた交渉が続いていた。また同25日の団交で会社側は社長名で「当社は、閉鎖することなく、従来通り、永久に事業は継続されます」との覚書も示した。

南氏は「交渉相手の会社は経営体力、新聞継続への熱意のどちらも現社長より優れる」とした上で、「(交渉先は)宮古島に地元紙が複数あることで、言論の多様性が保たれる必要性を理解している。社長が混乱させなければ交渉は進む」と語った。

その矢先の「清算宣言」。会社側は1月10日、従業員に文書で解雇を通知したが、労組は社長に再度の団交を申し入れた。10日の閉鎖は回避され、週明けの15日も新聞を発行。また、同社ウェブサイトも閲覧できる(同日時点)。

「一連の責任はこれまでの座喜味社長のふるまいにある。五十数年の歩みが社長の会社私物化によって失われないようにすべきだ。事業を継続するとの約束を簡単に反故にしてはならない」と南氏。前出の労組幹部も、「社長は会社清算を撤回して雇用を継続し、事業譲渡に向けた交渉を続けてほしい。セクハラ、パワハラも認めて謝罪を」と話している。

本誌は社長あてにFAXで質問を送ったが、15日正午までに回答はなかった。

(斉藤円華・編集部、2019年1月11日号)

※編注:<同社の労働組合が新聞発行継続のため事業譲渡を求めていた件で、同社の顧問税理士を務めてきた松川吉雄氏(63)の関連する会社が事業譲渡を受けることが24日、関係者の話で分かった。今月10日から労組が主体となって新聞発行を続けてきたが、2月以降も発行を継続できる見通しが立った。>『琉球新報』公式サイト1月25日配信記事より

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