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「アイヌ新法」と遺骨問題でチャランケ 
国との溝は埋まるか

斉藤円華|2018年11月12日6:37PM

国とのチャランケ後、会見に臨むアイヌの参加者。(撮影/斉藤円華)

「生存権の明記を」「遺骨調査にアイヌを加えよ」。国が来年の国会提出をめざす「アイヌ新法」、およびアイヌ遺骨問題に関するアイヌと国との「チャランケ」(交渉)が10月25日に東京都内であった。

国の現在のアイヌ政策は、生活支援と文化振興を軸とする。新たなアイヌ政策で国は、アイヌの自立促進にむけて産業や観光、および地域振興なども盛り込む方向で検討を進める。2020年春に北海道白老町でオープン予定の「民族共生象徴空間」は新たなアイヌ政策のシンボルとなるものだ。

一方、アイヌは生存権の保障に向けて、新法に土地の返還や鮭の捕獲、生存捕鯨の権利付与を明記するよう求めている。チャランケで国は、新法に「地域振興・産業振興等」を名目に交付金制度を盛り込む考えを示した。

これについて「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」の出原昌志さんは、チャランケ後の会見で「国は新法を当初、アイヌを先住民族と認めるが具体的な政策は含めない『理念法』にしようとした。これに対してアイヌが生存権の保障を要求した結果だ」と説明する。ただし、新たな交付金制度に土地返還や鮭の捕獲などが盛り込まれるかは不透明だ。

現状ではアイヌが鮭を捕獲する際、そのつど行政から「特別採捕」の許可が必要だ。紋別アイヌ協会の畠山敏会長は今秋、許可を出さずに儀式目的で鮭を獲ろうとしたところを警察に阻止された。チャランケに出席した畠山氏は「許可書を得るにも役人が不在なら印鑑一つもらえない」と訴えた。

また、遺骨問題に関するチャランケでアイヌは「遺骨を盗掘した『加害者』が行なう調査は信用できない」として、新たな国の調査へのアイヌの関与を求めた。

かつて研究者らが無断収集し大学等が保管するアイヌ人骨について国は、民族共生象徴空間の慰霊施設への集約を計画している。

(斉藤円華・編集部、2018年11月2日号)

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