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専門学校生の自殺はパワハラ原因
大阪地裁が学校に賠償命令

村上恭介|2018年7月20日12:25PM

近畿リハビリテーション学院の公式サイトから。

理学療法士を養成する専門学校「近畿リハビリテーション学院」(大阪府摂津市)に通っていた学生が自殺したのは、実習先の診療所「辻クリニック」(大阪市住吉区)で受けたパワーハラスメントが原因として、遺族が学校と診療所を運営するそれぞれの医療法人に約6100万円の損害賠償を求めた訴訟(本誌2月23日号既報)で、大阪地裁は6月28日、全額の支払いを命じた。北川清裁判長は、臨床実習の指導役が「一方的に威圧感や恐怖心、屈辱感、不安感を与えた」とし、自殺との因果関係を認めた。

原告代理人の髙橋典明弁護士は「専門学校や実習先におけるパワハラ、いじめを断罪した初めての判決であり、全国の実習現場に大きな影響を与える」と評価している。

自殺した学生の妻で原告の大野佳奈子さん(44歳)に対し、連帯して賠償するよう命じられたのは、専門学校を運営する「高寿会」(大阪府吹田市)と、診療所を運営する「一裕会」(大阪市住吉区)。

判決などによると、国家資格の理学療法士になることをめざし、近畿リハビリテーション学院に通っていた大野輝民さん(当時39歳)は、卒業前の臨床実習を辻クリニックで受けたが、指導担当者(理学療法士)から大量のレポート提出などを課せられて睡眠2~3時間の日々が続いたうえ、「帰れ」といった叱責を繰り返され、2013年11月、「もう無理」と走り書きした遺書を残して自殺した。

診療所側はパワハラを否定したが、判決は指導役が大野さんに「次やったら終了」などと述べて実習中止を示唆し、過度の心理的負荷を与えたと認定。実習の作業時間が国の基準(週45時間)を大きく上回る70時間に及んでいたことも過重だったのに放置した、と批判した。また専門学校には大野さんが自殺前に相談したのに、対応しなかったと指摘し、両法人ともに学生の健康に注意するべき安全配慮義務違反があったと結論づけた。

(村上恭介・ジャーナリスト、2018年7月6日号)

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