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前原誠司氏はリーダーの資質に欠ける(西谷玲)

2017年10月28日3:00PM

10月10日の衆議院議員選挙公示を控え、日々政治状況が大きく動いている。このコラムが出るころには、東京都知事に就任して1年2カ月しか経っていない小池百合子氏が衆院選に出るかどうかがはっきりしているし、リベラル新党の動向もはっきりしているだろう。

前回の本欄(9月8日号)で「新たな船出か泥船か」と民進党新代表への懸念を指摘したが、希望の党と民進党の「合流」劇は非常にお粗末だった。前原誠司氏のリーダーとしての資質がないことが露呈した。合流という以上、全員を受け入れることを担保しなければ意味がないだろう。人生をかけて政治に取り組んでいる、あるいはめざしている人たちのことをどう思っているのか。

この人は昔からそうだが、どうも自分をヒーローだと思い、その自分に酔っている感じがある。今回も「安倍政権打倒のための野党大同団結に殉じる自分」に酔っていたように見えた。しかし詰めが甘すぎる。巻き込まれた人たちはたまったものではない。

枝野幸男氏が代表になっていたらこうはなっていなかった。民進党は肝心なところでリーダー選びを間違える。政権交代を目前にした民主党時代の2009年も、岡田克也氏と鳩山由紀夫氏が立候補して、世論の支持は岡田氏のほうが高かったのに、選ばれたのは小沢一郎氏がバックについていた鳩山由紀夫氏だった。

希望の党は、すでに多くの人が指摘しているように「極右」の党である。小池百合子氏は保守系(というか、右翼)団体の日本会議国会議員懇談会に籍を置いていた。「希望」は外国人地方参政権に反対し、憲法改正に前向きだ。

「寛容な保守」と見せかけるために、とってつけたように夫婦別姓容認を挙げているが、いかにもわざとらしいし、いかがわしい。「寛容な保守」が排除し、分断を促進しているのだ。洒落にもなっていない。

新党騒ぎが起きてから、漫画家の小林よしのり氏の講演を聞く機会があった。リベラル新党結成をめざしたいと話していた。かつて右翼の先鋒と思われていた氏が「リベラル」である。社会がどんどん右に寄っているのだ。

日本社会はどんどん不寛容になっている。そもそも、今回の解散の大きな引き金の一つであろう、山尾志桜里氏の「スキャンダル」騒ぎもそうである。政治家の仕事と、私生活は関係ない。きちんと仕事さえしてくれればいいのだ。だいたい、彼女のことを責められる人がどのくらいいるのだろう。

そして、「寛容」を掲げる党の選別と排除、非常に嫌な感じを受ける。しかもそれを決めているのはごくわずかな人たちで、クリアな基準もない。

これから何が起こるのか。小池氏が衆院選に出れば、「希望」が勝利、与党となって彼女が首相となることだって考えられる。

そうでなくて、自民党が与党のままでも大敗すれば安倍晋三首相が退陣し、総裁選が行なわれる可能性もある。その際、これまで下馬評の高かった岸田文雄氏とならず、大穴的存在であった野田聖子氏が出てくるかもしれない。となれば、こちらも初の女性首相となる。野党の再編だってあるだろう。もう何でもあり。日本政治は混沌と混乱の時期に入った。
(にしたに れい・ジャーナリスト、10月6日号)

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