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前原民進党代表、国政選挙で「書生論」を改められるか

2017年9月12日5:19PM

民進党代表戦に立候補した前原誠司氏(右)と枝野幸男氏の記者会見。(撮影/横田一)

9月1日投開票の民進党代表選が8月21日に告示され、前原誠司元国土交通大臣と枝野幸男元官房長官が立候補、党本部での共同記者会見に臨んだ。翌22日からは地方での街頭演説と討論会がスタート、初日の新潟では枝野氏が“原発稼働即時ゼロ”に等しい踏み込んだ発言をした。今後の国政選挙で「再稼働反対」を旗印の一つにした非自民勢力結集(市民参加型野党選挙協力)につながる内容で、討論会直前の記者会見で飛び出した。

まず柏崎刈羽原発再稼働などについての質問に対して、前原氏が民進党結党の基本政策合意に「国の責任を明確化し、責任のある避難計画が策定され、核廃棄物の最終処分場選定プロセスが開始されることが(再稼働の)前提」と書かれていることを紹介。これを受けて枝野氏はこう明言したのだ。

「柏崎刈羽原発再稼働については明確に反対です。前原さんが言った民進党結党の時の合意文書の前提が整っていない上に、米山知事を先頭にして新潟県としても、県民の意思としても理解が得られているとは思いません。従って、いま再稼働は認められない」

各地の原発周辺住民の避難計画は不十分で、核廃棄物の最終処分場選定プロセスも動き出していないため、原発再稼働は数年オーダーで一切認められないことになる。実際に米山隆一新潟県知事は、避難計画や安全性などの検証に3年から4年はかかると断言。柏崎刈羽原発の再稼働は当面は困難という状況に陥っている。再稼働のハードルの厳守は、実質的な原発稼働ゼロ(原発ゼロ社会の実現)をもたらす効果があるのだが、ここに枝野氏は注目したのだ。

【前原氏に迫る】

記者会見後の討論会で枝野氏は前原氏に、「柏崎刈羽原発の再稼働を容認するかどうか」と質問、原発政策に差異があるのかを確認した。前原氏はこう答えた。

「原発のない社会を創っていくことにわれわれは使命を負っている。私は米山知事の選挙を一生懸命応援し、上越で他党と一緒に演説した。その流れからすると当然ながら柏崎刈羽原発は再稼働する状況にないことは明確だ」。

去年10月の新潟県知事選で米山知事は、避難計画が不十分なことなどを理由に、柏崎刈羽原発の再稼働反対を訴えて自公推薦候補を打ち破ったが、その新潟で両候補も同じ論法を使って「再稼働反対の民意の受け皿に民進党がなる」という意気込みを明らかにしたといえるのだ。

ちなみに新潟県は、参院選1人区で野党統一候補が当選、新潟県知事選でも実質的な野党統一候補が勝利。この時の大きな争点が再稼働反対だった。そこで、野党共闘の見直しを表明している前原氏に、なぜ新潟をモデルに同じような選挙協力を進めないのかについて聞いてみた。

「前原さんは(野党選挙協力の)見直しを言っているが、理由をお伺いしたい。『理念や政策の一致が必要』ということだが、自公は違いを乗り越えて選挙協力をして成功している」

前原氏はこう答えた。

「先の二つ(の新潟モデル)は参院選と知事選挙。衆院選は政権選択の選挙ですので、基本的な理念や政策というものが一致しないと、やはり同じ政権を組むことにならないと思いますので、話はまったく別だと考えております」

自らが体験した成功事例(新潟県知事選)から目を背け、自公を利するに等しい“自縄自縛的書生論(理想論)”ではないか。茨城県知事選(8月27日投開票)では、自公推薦の大井川和彦候補が原発再稼働反対の現職と新人2候補を破って当選したが、原発政策に大きな違いがある自公の“野合的”推薦(先週号で紹介)の産物でもあった。この県知事選で民進党は自主投票で存在感は皆無だったが、今後の国政選挙では再稼働反対の旗を掲げて野党統一候補擁立をすれば、新潟モデルの成功事例を全国各地に広げることができるに違いない。前原氏が自縄自縛的書生論を改めるのか否かが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、9月1日号)

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