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11月16日の投開票に向けて4氏が立候補――乱戦模様の沖縄県知事選挙

2014年11月4日5:29PM

11月16日投開票の沖縄県知事選まで1カ月を切った。普天間飛行場の移設問題が全国的に注目を集める中、4人が立候補を表明する乱戦模様となっている。辺野古移設のスタンスも「推進」「反対」「県民投票」「埋め立て承認撤回」と4様で、投票結果そのものが県民投票的な色彩を帯びそうだ。

「冒頭に一言お詫び申し上げる」。仲井眞弘多氏が10月18日に那覇市内で開いた政策発表は、お詫びから切り出す異例の体裁だった。

内容は「いい正月発言」と呼ばれる自身の失言。沖縄では約1年にわたり批判の対象になっている。

仲井眞氏は昨年末に首相官邸で安倍晋三首相から沖縄振興予算の拡充を取り付けた際、記者に「いい正月を迎えられる」と発言した。直後に辺野古埋め立ての承認を発表したため、自民党県連内からも「基地建設を認めるのは苦渋の選択。それが『いい正月』では保守系の理解も得られない」と苦言が相次いだ。

仲井眞氏は「県民の皆様に誤解を招いたことは、私の不徳のいたすところ」と自発的に詫び、政策集に初めて「苦渋の選択」を明記した。複数の世論調査で翁長雄志前那覇市長先行の数字が出ている情勢を受け、県内世論に歩み寄る姿勢を打ち出した格好だ。

実際に首相官邸や自民党本部からは「辺野古推進を掲げる候補で負けるより、不戦敗の方が望ましい」との意見もくすぶっている。ただ、県内41市町村のうち29の首長が支援を表明しており、仲井眞氏は周囲に「政策発表後には翁長氏に詰め寄れる」と自信を漏らす。

一方、辺野古移設反対を掲げる翁長氏の強みは、保革相乗りによるウイングの広さと言える。仲井眞県政を支えた県庁OBの組織を発足させるなど、現職側の切り崩しにも余念がない。

自民系議員から日本共産党まで共闘する陣営構成に不協和音の懸念もあったが、翁長氏が訴える「腹8分、腹6分で一つにまとまる」路線が現時点では機能している。共産党県委員会の幹部は「考え方が異なる政策は無数にあるが、辺野古反対の一点で共闘する以上、ウチは『腹1分』でも翁長氏を支える」と腹をくくる。

ただ、翁長氏を支援する保守陣営の中心は、那覇市議と那覇に拠点を置く企業グループ。他の市町村での集票は労働組合や共産党など革新票に頼らざるを得ず、全県的に保守票を奪えるか未知数だ。

陣営幹部は「那覇で現職にどれだけ差をつけるかが最大のポイント」と分析し、他市町村では支持政党のない無党派層が雪崩を打つことに期待している。

元郵政民営化担当相の下地幹郎氏は、辺野古移設の是非を判断せず、当選後6カ月以内に県民投票を実施する公約を打ち出した。

1996年の普天間飛行場の返還合意以来、4回の知事選、5回の名護市長選を経ても解決しておらず「選挙で決着させるのは不可能」(下地氏)として民意にゆだねる考えだ。

当初は「仲井眞氏との一本化調整の末に選挙戦から降りるのではないか」と囁かれていたが、全県的に選挙事務所を設置するなど精力的な運動を展開しており、「乱戦であればチャンスが生まれる」(陣営幹部)とみて、草の根の運動を続けている。

急遽出馬を表明したのが、前民主党参議院議員の喜納昌吉氏だ。翁長氏が当選後のフリーハンドを保つため「埋め立て承認撤回」を明言しないのを尻目に「唯一の撤回候補」として名乗りを上げた。

ただ、喜納氏に出馬取りやめを勧告していた民主党本部は14日、喜納氏を除名とする厳しい処分を下した。組織をなくし選挙戦でも出遅れる喜納氏が出馬にこだわる理由をめぐっては、さまざまな憶測が飛び交っている。

喜納氏はかねて翁長氏を「権力至上主義者」と批判しており、もっとも浸透しているのは「翁長票を奪うため仲井眞氏側と連携している」という観測だ。喜納氏は「承認撤回の選択肢を県民に示す候補者が必要」と語り、現職側との連携を全面的に否定している。

(吉田央・沖縄タイムス記者、10月24日号)

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