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理研“STAP細胞”騒動――副センター長が自死

2014年8月19日11:02AM

理化学研究所ユニットリーダーの小保方晴子氏がSTAP細胞について英国科学雑誌『ネイチャー』に投稿した論文の共著者で、同研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB・神戸市)の笹井芳樹副センター長(52歳)が8月5日朝、隣接する先端医療センターの建物内で首を吊っているのを警備員が発見。神戸市内の病院に搬送されたが死亡が確認された。兵庫県警の調べでは小保方氏や研究関係者宛ての遺書が残されていた。

STAP細胞に疑義が出た後、小保方氏は4月9日に大阪市で「STAP細胞はあります」と会見したが、理研の調査委員会は「小保方氏に不正があった」として、小保方氏や上司の笹井氏らの懲戒処分を検討していた。笹井氏は小保方氏への指導の不十分については謝罪したが、STAP細胞の存在については自信を見せていた。4月からの再現実験では途中から小保方氏も加わっており、8月中には中間発表されるはずだった。

兵庫県生まれの笹井氏は京都大学医学部卒、1998年に36歳で同大学の教授となり、理研に入った。胚性幹細胞(ES細胞)の研究で世界的に知られる。今年1月の「STAP細胞成功」の会見では小保方氏と同席し、“華やかな会見を演出した”と言われたが、一部ではiPS細胞の山中伸弥京都大学教授に先を越されて功を焦っていた、との報道もあった。

竹市雅俊・CDBセンター長は5日午後、「3月には副センター長を辞めたいと申し出ていた。苦しい状況にあったはずだが、もう少し我慢してほしかった。本当にショックです」と語り、再現実験には「影響しないと思う」と述べた。

科学組織の独立行政法人化以降、メディア(『ネイチャー』とて商業雑誌)に大きく取り上げられることが巨額の予算獲得に直結する構造が生まれている。空前の科学スキャンダルで優秀な研究者が犠牲になったことは残念でならない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、8月8日号)

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