袴田死刑囚の後見却下――東京家裁・高裁に抗議
2013年8月8日7:42PM
一九六六年に静岡県で一家四人が殺害された「袴田事件」で、無実を訴えてきた元プロボクサー・袴田巖死刑囚(七七歳)の姉・秀子さん(八〇歳)と八つの支援団体は七月一八日、後見の開始申し立てに関する東京家裁・高裁の審判に対し、両裁判所に抗議した。
袴田死刑囚は、長期の拘置による精神障害や認知症を患っているとされ、秀子さんは相続した土地の権利関係を整理する目的で、二〇一二年四月、後見の開始を申し立てた。しかし、東京家裁は今年五月、袴田死刑囚の精神鑑定ができないことを理由に却下。東京高裁も、わずか一カ月余の審理で即時抗告を棄却した。秀子さんと八つの支援団体は「鑑定を実現するために何ら有効な手段を取らなかったのは不当だ」としている。
家裁が鑑定人に指定した精神科医は東京拘置所の袴田死刑囚を二回訪ねたが、本人に面会を拒否されて「精神鑑定はできない」との報告書を家裁に提出。家裁はこの間、弁護団の要請を拘置所に取り次ぐ形で本人の房内での面会に協力を求めたが、断られると、職権での鑑定実施などの措置を取らないまま却下の審判をしたという。
一方で袴田死刑囚は、静岡地裁が第二次再審請求審で実施したDNA鑑定では、一二年三月に同拘置所内で血液の採取に応じている。支援者は「今回も職権で行なえば精神鑑定はできた」と主張し、「鑑定人が会えない理由や背景を突き詰めるのが司法の役割」「死刑確定囚でも権利が守られるのは当然だ」と今回の対応を批判した。
後見開始が認められれば、刑事訴訟法が定める死刑の執行停止要件(心神喪失)に該当する可能性が高くなる。支援者らは、拘置所が鑑定に協力しなかったのは、これを避けるためとの疑念を募らせるとし、秀子さんは最高裁に特別抗告をした。弁護団の村崎修弁護士は「裁判所の不作為によって、憲法が保障する巖さんの生存権、人格権と二人の裁判を受ける権利が侵害された」と話している。
(小石勝朗・ジャーナリスト、7月26日号)