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【本多勝一の風速計】 国連演説は日本語で

2011年9月15日4:33PM

『東京新聞』の二〇〇九年九月一九日夕刊で、コラム「太郎の国際通信」の筆者・木村太郎氏は「国連演説で新風を」と題して、日本の首相が国連ではスピーチをすべて英語で通すことをしきりに推奨しました。

 エスペラントをかつて学んだ者の一人としてこれには違和感を覚えますが、そうでなくても「英語」自体を無条件で“国際語”と決めてしまっていることに強い疑問を感じます。今やアングル語(英語)は人類最大の差別問題だと思っているのですが、多くの民族がその側面にまだ明確には気付いていない情況、これは一種の悲劇ではありませんか。

 コトは実に単純きわまると、言えば言えましょう。第一に、あまりにも不公平だという事実。これでは米英などの“英語国民”は、生まれながらにして“国際語”を話していることになりますが、その他の国民は苦労してそれを学ばねばなりません。旧制中学一年で初めて「英語」なるものの授業があった私の場合、敗戦の前年当時この外国語を信州のド田舎で学ぶ意味などわからず、同じ時間を好きな分野に費やしたい思いが消えませんでした。げんに“英語国民”はそうしているわけでしょ?

 第二に、これを国際語にするということは、侵略した征服者の言語を世界共通語として正式に採用することでもあります。ワシントン初代大統領以来のアメリカ合州国史をみるとき、まず北米大陸内で西進して先住民族(俗称アメリカインディアン)への最後の侵略を終ったのが明治二三年(一八九〇年)の「ウンデッドニーの虐殺」ですから、今からでもわずか一二〇年ほど前のことです。

 この虐殺に直接関与した米兵当人らがそのまま太平洋に進出して、九年後のハワイ侵略・虐殺や一〇年後のフィリピン侵略・虐殺(一九〇〇年)に加わりました。日本占領(一九四五年)もこの合州国西進史からすれば、つづくベトナムやイラクやアフガニスタンへの米軍“進出”への道程上の節目だったという視点さえ可能でしょう。

 そして英語は、このような合州国侵略史とセットになっていました。要するに侵略者の言語です。日本の歴代首相も日本語に誇りを持つなら、国連でも日本語で演説しましょう。中国が中国語でやるように。フランスの歴代首相は、英語が話せる場合でも国連ではフランス語で演説したと聞きます。

(7月15日号)

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