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国交省「希望出生率1・8」住生活変更案に異論続出――“家賃補助策”こそが必要

変更案の問題点を指摘する坂庭國晴さん。(2月13日、東京・台東区。撮影/山村清二)

変更案の問題点を指摘する坂庭國晴さん。(2月13日、東京・台東区。撮影/山村清二)

少子高齢化・人口減少が急速に進むなか、政府は、これに対応した住宅政策の転換ができるのか。

1月22日、国土交通省が発表した「住生活基本計画(全国計画)」の変更案(以下変更案)をめぐって期待と不安が交錯している。国交省では、変更案をもとに2月12日までパブコメを募集。こうした動きを受けて、2月13日、東京・上野区民館で「住生活基本計画(全国):国交省パブコメ徹底討論」(主催:日本住宅会議関東会議・住まいの貧困に取り組むネットワーク・国民の住まいを守る全国連絡会)が開催された。

新たな住生活基本計画は、「今後10年の課題に対応するための政策」を示すものとして、「目標(1)結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現」、「目標(2)高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現」など八つの目標を掲げる。

国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事の坂庭國晴さんは、「変更案には多くの問題があるが、とりわけ目標(1)を『結婚・出産を希望する』とし、本文中で『希望出生率1・8の実現』とうたうことは大きな問題」とする。「希望出生率1・8の実現」は、アベノミクスの「新三本の矢」の目標に対応するものだが、「これでは戦時中の『産めよ増やせよ』の住宅政策と同じ」と批判した上で、「(住宅宅地)分科会で出ていた『安価(住居費負担の軽減)で居心地のよい空間としての住まいの実現』という重要な論点が、変更案にはまったく反映されていない。希望する住宅を選択・確保できる環境の整備をうたうなら、住宅費負担の軽減、すなわち“家賃補助策”が不可欠」と指摘する。

この意見に対して、多くの参加者から賛同の声が相次いだが、別の角度から現在の住宅政策の問題点を語ったのは、中小建設業制度改善協議会会長の星野輝夫さん。住まいのつくり手の立場から集会に参加した星野さんは「いま、つくり手の存続自体が危機です。現在、建設就業者は500万人程度ですが、高齢労働者の定年や若手労働者の入職減で、今後10年間に約130万人が不足するとされています。かつての3K(危険、きつい、汚い)職場の要素はなくなりつつありますが、問題は、低賃金、長時間労働、社会保険なしといった悪い労働条件です」と、人手不足解消に向け、労働条件改善の必要性を訴えた。

【空き家の「準公営化」を】

一方、住まいの貧困に取り組むネットワークのメンバーで、この日の集会に参加できなかったNPO法人・自立生活サポートセンター・もやい理事の稲葉剛さんは、変更案について、「『希望出生率1・8の実現』は、個人のライフスタイルへの干渉になりかねず、不適切。『三世代同居・近居の促進』も削除すべき」としつつも、今回、「空き家の活用」目標(6)が明記されたことに注目する。

「私たち『住まいの貧困』に取り組むNPO関係者や研究者は、増加の一途をたどっている全国の空き家について、住宅の確保に苦しむ低所得者への居住支援に活用できないかと、これまで、様々な形で提言活動を行なってきましたから、変更案において空き家の活用が明記されることは重要です」

ただし、「空き家の活用」において、ポイントとなるのは、これを「準公営住宅」に位置づけることだとも強調する稲葉さん。低所得や高齢、ひとり親など、住宅確保に苦しむ人々の多くが、安価で利用しやすい公営住宅への入居を希望するが、競争率や条件などの壁があって、なかなか入居できないのが現実だ。それだけに「一定の基準を満たす空き家を『準公営住宅』として位置づけることを計画に明記すること。また、『準公営住宅』の対象は、子育て世帯や高齢者だけでなく、若年単身者なども含めた低所得者全般とすることが必要です」と語る。

今後、国交省は、答申を経て、3月中に閣議決定をしたいとしている。「住まいの貧困」克服への有効な一歩が踏み出せるのかどうかが注目される。

(山村清二・編集部、2月26日号)