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逮捕者は428日も勾留――不可解な公安「倉敷民商」捜索

確定申告の際、申告者が作成した決算書の数字を税務ソフトに入力するといった手伝いをしただけで民主商工会(民商)の女性事務局員が脱税がらみの「法人税法違反容疑」等で逮捕・起訴され、しかも当の申告者が逮捕も勾留もされていないのに、何と約1年2カ月間(428日)も勾留される――。こんな異様な事件が、岡山地裁で審理中だ。

この女性は、倉敷民商の事務局員・禰屋町子さん。事件の発端は2013年5月21日、岡山県倉敷市の民商事務所に広島国税局が、当時会員だった建設会社社長夫妻の「脱税容疑」と称して捜索に入ったこと。禰屋さん宅も捜索された。

禰屋さんの容疑は、建設会社の経理担当者の指示に従い、単にパソコンの会計ソフトの入力作業や振替伝票の作成を行なったことが脱税(法人税法違反)を「幇助」し、さらに資格がないのに税理士の業務をした(税理士法違反)というもの。だが、家宅捜索で押収された164点の書類中、この建設会社関連のものはごくわずかで、大半が容疑と関係のない倉敷民商の会議議事録や会員の名簿、スケジュール表といった組織の内部資料で占められていた。

しかも、この種の経済事件とはまったく管轄外のはずの岡山県警公安部は翌2014年1月21日、禰屋さんを「法人税法違反」で逮捕したのに続き、2月には「税理士法違反」で再逮捕。だが、脱税当事者であるはずの建設会社社長夫妻は後に在宅のまま懲役1年6カ月・執行猶予付きの有罪判決が確定したものの、1日も勾留されず、なぜか広島国税局の捜索すら受けていない。

つまり、形式上脱税事件の「主犯」を単に「幇助」した立場の禰屋さんが、「主犯」が免れた国税局の捜索や勾留を強いられた上に、勾留日数も428日にも及ぶという異常な事件だ。さらに検察側は肝心の建設会社の脱税に関し、現在まで重加算税が課せられたのかどうかの事実すらも明らかにしていないという不自然さだ。弁護側は、「禰屋さんが一貫して容疑の否認を貫いたため、裁判所が事実上の制裁を課した人権侵害だ」と抗議している。

【なぜ管轄外の公安が】

起訴された禰屋さんは現在、岡山地裁で審理中で、この1月22日に第15回目の公判が予定されているが、判決日は未確定だ。一方、建設会社の確定申告業務には何も関与していなかった倉敷民商事務局長の小原淳氏と事務局次長の須増和悦氏の二人も、14年2月に「民商会員が確定申告書の作成・提出に際して、税理士でもないのに会員自身が作成した決算書の数字を、税務ソフトに入力するなどの実務援助をした」として、「税理士法違反容疑」で逮捕された。

二人はやはり約6カ月(184日)も長期勾留された後、禰屋さんの逮捕・起訴とは切り離された形で15年4月17日に岡山地裁(松田道別裁判長)で、検察の主張通りに懲役10カ月(未決勾留100日参入)、執行猶予3年の有罪判決を受けた。二審の広島高裁(大泉一夫裁判長)も12月7日、弁護側の証拠調べ請求をすべて却下し、控訴棄却の判決を下した。弁護側は最高裁に即時上告したが、一連の裁判で共通するのは、倉敷民商の「税務書類作成協力」が違法なのか、という争点だ。

禰屋さんの第13 回目の公判で11月6日に弁護側の証言に立った東京都の関本秀治税理士は、国税庁が育成してきた青色申告会では、税理士資格のない同会職員が税務申告書の作成を日常的に請け負っている実態を暴露。さらに、「税務書類の作成」と「税務相談」は、税理士法の趣旨から「可罰的違法性のない、誰がやってもよいものだ」と明言している。

かりに民商側の行為が違法でも通常は反則金等の行政罰で足りるケースだ。それを管轄外の公安警察が捜索し、「主犯」でもない逮捕者を長期勾留するのは、「中小企業会員の『自主計算・自主申告運動』を続けてきた民商に対する、権力の弾圧」(須増事務局次長)と批判されても仕方ないだろう。

(成澤宗男・編集部、1月8日号)