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萎縮効果で文化をつぶす都条例改定案の破壊力

2010年12月7日6:52PM

 日本漫画家協会(やなせたかし理事長)と、21世紀のコミック作家の会(さいとう・たかをさんなど五人が理事)、マンガジャパン(代表)の漫画家三団体が一一月二九日、都の青少年条例改定案に反対する声明を発表した。「表現の自由を侵害する恐れが極めて高く、創作活動を萎縮させる可能性がある」と、都議会に否決するよう強く求めている。

 同日、都庁で会見に臨んだ、ちばてつやさんは「これから漫画を描こう、アニメーションを創っていこうという若者たちが萎縮し、おびえているのを身近に感じている。文化がしぼんでしまうことを一番心配している」と強調した。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作者の秋本治さんは「(主人公の)両さんは、仕事中に酒も飲めず、賭け事もできず、普通の生活をするようになり、漫画として成り立たなくなる」「何も描けなくなるかもしれない」と話した。

 会見に同席した出版社幹部らは、前回の改定案で反対に回った都議会民主党の態度の変化に首をかしげる。来春の都議選を控え、都がPTAと各議員の地元で七二回に及ぶ会合を開いた影響を指摘する声もあるという。改定に反対した都議を”エロ議員”などと誹謗中傷、再選させないぞなどとの”圧力”があると囁かれている。

「都青少年課では昨年九月、突然の人事があり、警察庁からの出向者が増えた。それまでは都と議論しながら業界側で自主規制をしてきたが、頭ごなしに改定案が出てきた」「改定案を貫いている思想では、治安対策が家庭教育に入ってくる気がする」(出版幹部)

 では萎縮効果は実際にあるのか。

「都条例改定案をパロディー化した劇の上演を、劇場から『内容が反社会的なのではないか』として拒否されました」と話すのは、京都の劇団「笑の内閣」(http://www.geocities.jp/waraino_naikaku/)の高間響代表。劇の題名は「非実在少女のるてちゃん」。漫画の世界からやってきた「のるてちゃん」が高校の漫画研究会と協力し、条例成立を阻止しようとするあらすじだという。九月に京都市内で公演して好評だったため、一二月に東京公演を計画した。

 高間さんによると、都内の劇場数カ所を下見し、一カ所と一〇月九日、口頭で合意した。ファクスするよう言われた申し込み書を一〇日に送ったところ、翌一一日午後二時、劇場の管理人から使用を断る旨の電話がきたという。

 劇自体は今月一一、一二日の両日、東京・池袋のシアターKASSAIで公演されるが、条例を先取りしたかのような「萎縮」「自粛」効果に、高間さんは「私が『反社会的とはどういうことですか?』と問いつめたら、『企画書に条例に反対するって書いてるでしょ」と言った。これは、反対運動をしているすべての人への侮辱であり、この条例は表現の自由を奪う非常に危険なものと解釈しています」と憤っている。

(伊田浩之・編集部)

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