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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(4)──森田実×中島岳志

2015年7月16日3:25PM

孤立させない闘いを

中島 自民党は高めの球を投げて、その落としどころを探るやり方を取っています。つり上げた要求を最初に出し、最終的に譲歩したように見せかけるやり方です。公明党は、その手法にはまっている。あるいは意図的にマッチポンプを繰り返している。「歯止めになった」という演出ができるからです。

昨年の閣議決定前、自民党は砂川判決と芦田修正論をセットでもってきました。砂川判決は米軍基地を合憲と認めた(注4)もので、芦田修正論は、侵略以外の戦争が認められるという解釈の余地を憲法9条に付したものです。9条の第1項には侵略戦争はしないという旨が書かれていて、第2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としています。

砂川判決と芦田修正論をつなげると、憲法は侵略戦争をするための戦力保持・行使を禁じているだけで、個別的自衛権も集団的自衛権も禁じていないと解釈できる。これに山口さんなどが強く反発し、落としどころとして1972年見解が出てきた。でも、ここにもさまざまなほころびが生じています。

閣議決定の直後、安倍さんはホルムズ海峡の機雷除去はできると発言したり、岸田文雄外相は米軍に対する武力攻撃は「新三要件」(注5)に当てはまる可能性が高いと言っています。つまり、「米国が攻撃を受けたら一緒に闘います」ということです。完全に自国防衛から離れた集団的自衛権ですが、公明党は明確な批判を避けている。

森田 今後は、日米ガイドラインとそれに基づく法律作りが勝負になってくる。ここで「頑張れよ」と言いたい。公明党が自民党に寄りすぎれば、学会員の支持は受けにくくなる。今後の選択肢として、創価学会は公明党からもっと自由になるべきだとも思っています。

中島 自民党がかつて池田名誉会長に対する証人喚問を要求したことがありました。公明党は政治的に圧力をかけられたこうした歴史があるので、創価学会に対して厳しい態度を取る権力や勢力に抱きついていくという傾向がある。

昨年、大阪で起きた現象も同じです。大阪都構想をめぐって公明党と対立した橋下徹大阪市長が、都構想に協力しない場合は次期衆院選で公明党が議席を持つ大阪府内の二つの選挙区に自身と松井一郎大阪府知事が対抗馬として出馬する意向を議会で示した。これに対し公明党は、都構想についての住民投票を認める選択をしました。

森田 公明党はかなり甘く見られ始めています。「どこまででも付いていく」なんてことが新聞にも書かれてしまう。支持者はやりきれないですよ。こんな状態を阻止するためにも、公明党と創価学会を孤立させてはいけないと僕は思います。このままでは、公明党をさらに自民党の懐に入っていくようにさせるだけ。平和を希求するひとりの人間として、私たちは公明党を引き戻さなければならない。

中島 僕は、創価学会のみなさんは本当にこれでいいのかと訴えたい。創価学会は牧口常三郎という初代のトップが獄中死して、そこから「平和」の理念を掲げてきた。このままでは、平和運動を進めてきた創価学会および公明党の多くの人の人生が否定されてしまう。末端メンバーの悲痛な声をたくさん聞いてきましたが、公明党幹部が米国追随の集団的自衛権に邁進すれば、人生と信仰をかけて抗議してほしい。いっしょに立ち上がってほしい。それが「人間革命」の王道なのではないでしょうか。

(注4)「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない」との判決が59年に最高裁でくだされた。

(注5)武力の行使の「新三要件」。昨年7月に閣議決定した日本が武力行使をする際に満たすべき要件。「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」。

まとめ、写真/渡部睦美・編集部

(2015年4月17日号、一部敬称略、おわり)

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