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大阪・堺市とのメールやりとりで発覚――環境省が復興予算を押しつけ

2013年8月6日6:53PM

環境省が大阪・堺市の職員に送ったメールの一部。(提供/真野きみえ)

環境省が大阪・堺市の職員に送ったメールの一部。(提供/真野きみえ)

 膨大な復興予算を“消化”するために環境省が復興予算のバラマキをしている問題で、筆者が入手した大阪府を介した堺市と環境省のメールのやりとりにより、その実態が明らかになった。

 環境省の「がれき広域処理」を名目とした復興予算の使い道については、がれき受け入れを検討しただけで全国の複数の自治体に合わせて二四四億円などが交付されるなど、その問題が指摘されていた。そのうち、復興臨時増税の交付額が八六億円と突出している大阪府堺市には、抗議が六〇〇件あまり寄せられており、その多くは「堺市が、復興予算を騙しとるのはけしからん」というものだった。

しかし、今回入手したメールからは、事実は必ずしも自治体が騙しとったという構図ではないことが分かる。

 堺市は二〇一二年一月に一二年度交付金を「清掃工場の老朽化に伴い、通常枠及び日本再生重点化措置枠での措置」と「通常枠」として要望。これに対し環境省は二月二日、メールで「復興枠」への切り替えを提示。その後も、再三「通常枠」を主張する堺市の要望を無視する形で、同省から四月六日、一方的に「復興枠」としての内示が降ろされた。

 堺市は内示後も「本市の要望は通常枠か日本再生重点化措置枠なので、東日本大震災復興事業枠からの変更は出来ないか」と求めたが、回答は「復旧・復興枠の要望として取り扱う」であった。これでは、環境省による一方的な復興予算の押しつけではないか。

 なぜ、このようなことが起きるのか?

 そもそも震災がれきは、「発生した自治体」で処理をするのが法令上の決まりで、「広域処理」の大前提となる条件は「発生自治体で努力しても処理できない」という状態だ。

 ところが、当初大量に発生したといわれたがれきの総量は、再調査の結果、当初の六分の一にまで減り、大幅な下方修正がなされた。これは、十分に「発生自治体」で処理できる量である。現に、下方修正の結果を受け、広域処理は次々止まっている。

 しかし、環境省は、がれき処理として復興予算一兆円を獲得し、予算が六倍にも膨らみ、マイナーな省庁からメジャーになったことから、どうにか予算を使い切ろうと必死なのではないか。今後の予算獲得を目的に、「広域処理」の必要がなくなった岩手、大阪の広域処理を死守しつつ、復興と関係の薄い堺市のような自治体に復興予算をバラまいたとみられる。

 環境省が予算獲得目的でがれきの総量を水増しし、下方修正後に予算のバラマキを行なったとしたら許されることではない。疑念を裏付けるように、岩手県は二〇一二年五月からの一年間、県内の焼却炉の運転をゴミ量不足として四三回も止めている。大阪市に搬出しながら、県内の焼却炉はゴミ量不足で止めるというのは、おかしな話だ。ゴミ量不足について岩手県は「作業員が書いた日報を元にしたまで。広域処理のためではないし、焼却炉の年間稼働率は一〇〇%なので問題ない」(災害廃棄物対策課)としている。

 このほか、広域処理の正当性が揺らぐ情報は焼却炉停止に留まらない。岩手県は市民団体の情報開示請求に、環境省の指示を匂わす資料を出してきた。同団体の代表松下勝則氏によると、資料にある黒塗りの部分が透けていて「環境省案」の文字が見えたという。松下氏は「岩手県の内部資料に環境省案が存在する事実は大問題だ」とし、「自治体の要請を受けてきただけとする建前が崩れ、環境省主導で自治体に提案してきた証拠ではないか」と指摘する。岩手県は黒塗り部分については、「回答できない」とした。

 こうした中、大阪市は七月一七日、九月で広域処理受け入れを終了すると発表したが、先行きは不透明だ。受け入れを巡って同市では、反対派の市民にすでに一〇人以上の逮捕者を出し、逮捕の正当性が問われる事態となっている。

 政府が一一年度から五年間の復興予算枠を六兆円拡大し、二五兆円にする方針を出したのは今年一月末。「被災地の皆さんの不安を払拭できると思う」と語った安倍晋三首相だが、“名ばかり復興”が進んでいるだけというのが実態のようだ。

(真野きみえ・ライター、7月26日号)

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