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池口恵観氏の朝鮮総聯落札問題――断念の“裏側”を秘書が初告白

 池口恵観氏(鹿児島市内の宗教法人「最福寺」法主)は、なぜ朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)本部購入を断念したのか。四五億一九〇〇万円という巨額で落札した池口氏。約四〇億円の納付期限となった五月一〇日、池口氏は「正式断念」を表明した。三月九日に落札した池口氏は全額納付に自信さえ見せていたが、実際は資金調達はことごとく頓挫していた。

 その全容を池口氏の秘書で資金調達の中心人物とみられていた東勝也氏が重い口を開いた。

 東氏が語った四五億一九〇〇万円の資金調達の全容はおよそ次のようになる。そもそも池口氏には資金があったのか、あるいは資金調達のメドがあったのかという筆者の問いに東氏は「池口さんにはまったく資金はなかった」と明言。では、約四〇億円の納付資金調達はできていなかったのかという問いには「資金は調達できていた。ただ邪魔が入った」のだという。

 東氏の資金調達は三月から始まった。落札時に納付した五億三〇〇〇万円は池口氏の信者などから集めている。残る約四〇億円は、最初にメガバンクA銀行との間で池口氏所有の最福寺別院の江の島大師で二万体の永代供養霊廟を一基一〇〇万円で販売、二〇〇億円で販売する事業計画を合意したという。A銀行はこれをファンド証券として担保化し融資を決定。二〇〇億円を一時的に保管しておく別段預金に入れた、という。もしそうならば資金調達問題など起きないはずだが、東氏によると「A銀行の行為に金融庁が介入してきた」結果、四月一六日頃には融資が不可能になったという。この頓挫を受けてA銀行がB銀行を紹介したがこれも進まず、さらにA銀行はC商社を紹介した。  

 C商社は北朝鮮のレアメタル資源開発権の取得を前提に全額融資を決定したが融資金利と一〇年間返済という条件が折り合わず、これも頓挫。さらにA銀行は別のファンド会社を紹介するが、これも合意に至らなかったという。最後はA銀行がDゼネコンを紹介した。筆者も五月八日の時点でこのゼネコン融資情報を警視庁から入手していた。そのゼネコンとはT建設だったが、東氏はこれを否定。東氏は知り合いのゼネコンだと説明したが企業名は明かさなかった。

 しかし東氏の説明は実にリアル。このゼネコンは八日夜に臨時取締役会を開いて三分の二以上で四八億円の融資を決定したのだという。そして九日、東氏はこの資金振り込みを確信してA銀行の役員と昼食をとっていた。そこにA銀行の関係者から「大変な事が起きている」と連絡が入った。大変な事とは、A銀行に金融庁から三人の人間が来て大もめになっている、という内容。東氏がA銀行に行くと、怒声のような話が聞こえたという。

 筆者は東氏に「金融庁の誰が来ていたのか」と詰問したが、東氏は「金融庁の人間らしい人物がいた……」としか説明しない。筆者は、安倍晋三総理が今回の融資に関与している可能性があるのかとも聞いてみた。東氏は「池口氏は安倍総理に訪米の三日前に『四五億円で売ってくれないか……』というメールを打っている。返事はなかったが……」と説明した。

 さらに「今回の融資を妨害したのは間違いなく内閣官房の情報官あたりだった。金融庁も内閣官房の意思、結局、安倍総理の意思で全ては頓挫したことは間違いない……信じないかもしれませんが」と言うのだ。

 インタビューの最後に、筆者は資金調達に奔走したという東氏が、前述のA、B、C、Dの間で交わしたと主張した金銭消費貸借契約書(借用書)の現物を見せるよう繰り返し要求した。その数カ所と交わした契約書こそが資金調達の事実を示せるというのに、なぜか「コピーしかないが、迷惑がかかる人がいるから死んでも話さないし、見せないし、明日にでも破り捨てる……」と言う東氏。

 朝鮮総聯中央本部をめぐっては六年前の元公安調査庁長官の緒方重威氏逮捕事件もあった。結局は今回も利権騒動という側面は否定できない。東氏は近く、池口氏の秘書という立場から離れる模様だ。

(成田俊一・ジャーナリスト、5月17日号)