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経産省らの“脅し”に屈した“エセ改革派”ぶり露呈――橋下市長、再稼働容認「敗北宣言」

2012年6月19日5:14PM

 橋下徹・大阪市長は六月一日、関西電力大飯原発の再稼働をめぐり、これまでの反対姿勢から事実上の容認に変わったことについて「負けたと思われても仕方ない」と敗北宣言をした。大飯原発の再稼働を妥当と判断した民主党政権に対して橋下市長は「政権を倒す」とまで言って反対してきたが、急に弱腰となって変節、口先やパフォーマンスだけの“エセ改革派”にすぎないことが露呈したのだ。

 変節の理由について橋下市長は「細野大臣が『暫定的な基準に基づく暫定的な安全判断である』と認めた。電力需要ピークが過ぎた秋には原発を止める期間限定の再稼働と理解している」「発送電分離やネガワット取引などの電力革命の道筋が見えてきた」として、一定の成果を勝ち取ったと説明した。

 たしかに、関西広域連合が五月三〇日に出した「原発再稼働に関する声明」には「大飯原発の再稼働については、政府の暫定的な安全判断であることを前提に、限定的なものとして適切な判断をされるよう強く求める」と書いてある。

 しかし四日に西川一誠福井県知事と会談した細野大臣と共に福井市入りをした仙谷由人政調会長代行は、地元議員向けの説明会で「期間限定の再稼働」とは一切言わず、配布資料にも「『特定の時限性』を持つという意味での暫定的なものとは考えていない」と秋に止める期間限定を否定してあった。

 政府の見解と橋下市長の解釈が食い違う玉虫色の文言となっており、これを成果と強弁するのは無理がある。しかも「秋以降も大飯原発を動かし続けた場合、再び、倒閣に転じるのか」との質問に橋下市長は「人生で倒閣と言えるのは二度まで。次に言うのは大勝負の時」と言って、再稼働問題の重要度をトーンダウンさせた。

 前回の倒閣宣言は「暫定的な安全基準なのに『安全宣言』したから。今回、細野大臣が『暫定的』と正直に認めたから(倒閣の)前提事実はなくなった」と闘う姿勢も消え失せた。

 橋下市長らは政府の玉虫色の空手形に飛びついたわけだが、敗北を喫した原因は「関西地区の夏の電力不足は約一五%で計画停電の可能性もある」という経産官僚主導の恣意的な予測に怯え、停電のリスクを取らされるという“脅し”に屈したのが実態だろう。

(横田一・フリージャーナリスト、6月8日号)

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