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「日本はどうして原発をインドに売るのか」――インド南部住民の反対運動活発化

クランクラム原発に近い漁村。運動拠点となっているキリスト教会裏敷地で議論する。(撮影/福永正明)

 インド南端タミル・ナドゥ州のクダンクラム原子力発電所建設をめぐり、住民の反対運動が活発化している。二五年間一貫して原発反対を訴える非暴力運動に、インド国内外から支援が集まっている。

 三月七日、反対運動拠点の漁村を訪ねると、二〇〇人ほどの住民たちが集い、周囲には昨年三月一一日の東京電力福島原発事故の説明ポスターも掲げられていた。原発閉鎖を求める「核エネルギーに反対する民衆運動」(PMANE)のリーダーたちは筆者に、福島事故後の原子炉、避難民、放射能汚染などを次々に問うてきた。筆者は「福島事故で原発の危険性に疑いはない。このクダンクラムでも起こりうる」と答えた。

 インド政府の計画では、国営企業インド原子力発電公社がロシア原子力関連企業アトムストロイエクスポルトの援助で、ロシア型加圧水型原子炉二基をインド洋の海岸沿いに建設。昨年前半に一号機の工事が完了し、七月に試験用燃料での試験運転が行なわれ一二月より商業運転開始予定であった。

 しかしそこに福島事故が起こった。衝撃を受けた住民は、数万人規模の原発反対運動を続けた。

 一九八八年に露印首脳が合意したが長期中断。九七年に建設工事着工、二〇〇四年に資材搬入用の小港湾施設が完成。原発建設工事も本格化した。

 計画発表当初からの原発反対運動は、〇一年に地元出身の元大学教授ウダヤ・クマール氏が帰国定住し、自ら設立したPMANEの代表となり活性化した。

 リーダーたちは、原発にまつわる危惧一三項目を説明する。(1)津波と地震の危険性、(2)環境影響評価や安全分析報告などが、住民に非公開。公聴会もない、(3)原発から半径二・五キロ地帯を強制立ち退きとする計画、(4)原発から半径三〇キロ圏内に一〇〇万人居住する、(5)冷却水と低レベル廃棄物の海への投棄、(6)環境や食物の汚染の危険性、(7)将来、六基追加の計画、(8)露製原発への国際的懸念などである。

 原子力発電拡大をめざす中央・州政府は、地元民一〇〇〇人の優先雇用、水道水の安価提供、福祉施設の充実、漁業補償金を掲げつつ、一方でPMANE幹部は反政府武装組織関係者であるなどとデマを流布した。

 住民は昨年八月の避難訓練で、「鼻と口を覆って最も近い建物に逃げ込んでドアを閉めること」という指示を受け、怒りを爆発させた。原発反対運動は大きな炎をあげて燃え上がった。

 八月以降、拠点となる教会裏敷地には、連日一万人以上が集結し、集会、デモ行進、女性たちの道路封鎖、無期限ハンストなどが繰り返された。建設工事は中断、保安要員以外は施設内に入れず、七カ月が経過した。この間、ウダヤ・クマールさんらPMANEリーダーは、シン中央政府首相、ジャヤラリタ州首相らと交渉を続け、ついに州首相は「住民の合意なき建設には反対」と決定した。

 しかし今年三月一九日、州首相が方針転換を突如発表。中央政府へ建設容認を伝達した。翌日から工事が再開し、一万人以上の州警察武装部隊が投入され、食糧・医薬品・水など物資搬入禁止、五人以上の集会禁止、PMANE幹部の逮捕状発行、メディアの報道規制、封鎖地域内の住民による外部への移動も禁止の事態となった。

 集会拠点には、無期限ハンストで抗議するウダヤ・クマールさんらリーダーを囲むように連日一万人の住民・支援者が集結し、鋭い抗議の叫びを上げた。三月二三日に高等裁判所緊急判決で警察の封鎖は解除され、無期限ハンストは三月二八日に解除となった。逮捕者は五〇〇人以上とされるが、集結した住民たちの数は減少せず、むしろ日に日に増加している。筆者が訪れた運動拠点村は、現在でも輪番でのハンストや集会が続き、原発稼働強行を阻止する態勢だ。

 住民は、日印両政府が進行させる原子力協定交渉について「どうして日本は原発をインドへ売るのか」と問いかけた。インドの原発反対運動は、日本の人びとに「原発海外輸出」反対を求めている。

(福永正明・大学教員、4月6日号)