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開沼博の正体〈後編〉──避難者の「死亡」原因が「反原発運動」?(明石昇二郎)

開沼氏の言説をていねいに追ってゆくと、根拠があやしいものが少なくない。一例を挙げれば彼が多用する、震災後の避難者の割合をたずねる「クイズ」がそうだ。どこが問題なのか。まずは、そこから検証しよう。

昨今、福島第一原発事故に関する評論を通じ、マスメディアで名前をよく見かけるようになった社会学者・開沼博氏。2016年4月21日付「WEDGE REPORT」で開沼氏は次のように語る(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6618?page=2)。

「拙著『はじめての福島学』では、冒頭で、あるクイズを紹介しています。福島から震災後避難して県外に移った人って震災前の人口の何%だと思いますかと講演などで聞くと、たいてい20~30%などという答えが返ってくる。避難者の話をよく聞いているという関西の地方紙の記者は40%と答えました。でも、正解は2%。極端な情報ばかり流れてきた証左です」

開沼氏は約1年後の『SIGHT』65号(17年3月1日発売)でも、同様の趣旨で語っている。この「クイズ」が相当気に入っているようだ。だが、ちょっと待ってほしい。

作為的に使われる避難者統計データ

東日本大震災直前の11年3月1日における福島県の推計人口は202万4401人。一方、福島県がホームページで公表している避難者数は、12年5月のピーク時で16万4865人である。最大で8・1%にも及ぶ県民が避難していた計算になる。

 一方、開沼氏が正解とする「2%」という数字は、14年当時の県外避難者数約4万6000人をもとに弾き出したものだ。ピークから2年後とはいえ、福島県が公表している「8・1%」とはかなりズレがある。

種明かしをすれば、彼が挙げている数字には、被災した地域から福島県内の別の地域に避難している「県内避難者」が含まれていないのである。

同県が公表している今年2月時点の避難者総数は、ピーク時のほぼ半数となる7万9446人。そのうち「県内」避難者数は3万9608人で、「県外」避難者数もほぼ同数の3万9818人(避難先不明者は20人。グラフ参照)。つまり、開沼氏は全国各地での講演で、半数の避難者をいないものとして説明しているのである。しかも開沼氏が掲げた数字には、震災が起きるまで暮らしていた地域への帰還を諦め、避難先で定住する道を選んだ人々の数は含まれていない。

開沼氏が「福島学」として語る「2%」という数字は、震災や原発事故によって故郷を追われ、避難している県民一人ひとりの苦悩や、故郷への帰還を諦めた県民一人ひとりの心の傷や悲しみといった「福島県民の感情」を作為的に削ぎ落として、他人事にする。震災被害や原発事故被害を矮小化して伝えたい時くらいにしか使えない。

こうした“学問”は、誰から歓迎されるものなのだろう。

都合のいい証拠に頼る「確証バイアス」の虜

関西地方の新聞記者氏が“粗忽者の見本”としてネタにされていたことからもわかるように、迂闊に開沼氏の質問に答えるのは大変危険である。話した内容が開沼氏の意に沿うように“つまみ食い”され、予期せぬ全く別のストーリーの中で使われる恐れがあるからだ。それも、匿名の人物が語った話として使われるので、ネタにされた当人は全く気づかない。

そのことを知ってか知らずか、開沼氏の「調査」や「取材」を受けたことがあるという人はかなりいる。それは、東京や福島をはじめとした各地で反原発運動をしている人々にまで及び、例えば「脱原発弁護団全国連絡会」の共同代表で弁護士の海渡雄一さんも、彼の“調査対象”にされた経験がある。彼の調査のため、わざわざ時間を割いて協力したのだという。

が、彼が書いた記事や書籍の中で、海渡さんが登場したことはない。海渡さんも、
「あれはいったい何のための取材だったのか」
と訝しがる。

ところで、認知心理学や社会心理学における専門用語に「確証バイアス」というものがある。15年3月31日付『毎日新聞』ウェブ版でインタビューに答えていた開沼氏の言葉を借りれば、「自分にとって都合のいい確証・証拠ばかり集めようとする偏見のこと」であり、自分の持論や主張に反していたり否定したりする事実や情報は無視してしまう傾向のことだ。

開沼氏は、反原発を主張する人々は確証バイアスに囚われている、と考えている。彼によれば、反原発派の人々は「福島は放射性物質で汚れている」「福島に行ったら病気になる」と唱え続け、その考えを補強する証拠や情報しか受け入れようとしないのだという。しかし、そういう開沼氏自身が確証バイアスに侵されている疑いがある。

「開沼博の正体〈前編〉」で紹介した、見てもいない11年4月10日の「高円寺デモ」を「ウザい」と決めつけ「見過ごせません」と罵倒した話や、疫学と因果推論などが専門の津田敏秀岡山大学大学院教授が行なった疫学研究に対して、社会学者でありながら自分でデータを検証しないまま「専門家コミュニティーからフルボッコで瞬殺されています」と他人の褌を借りて全否定してみせた話は、自らの持論や主張を否定する話への反発であり、開沼氏が確証バイアスに侵されていると考えれば辻褄は合う。

彼が確証バイアスの虜になっていることを疑わせる材料は、他にもある。

反原発運動にあおられた「過剰避難」で人が死ぬ?

横浜や新潟などで発覚した、福島県からの「県外避難者」児童や生徒に対するいじめの問題の背景を尋ねられた開沼氏は、「避難を続ける中で心身に不調をきたすことによる2次被害」があり、地震や津波による1次被害の死者数より2次被害による死者数のほうが多いとした上で、次のように答えている。

「この理由の一つとして考えられるのは、福島の惨事に便乗して過剰に不安をあおる人が現れ、『過剰避難』が生じたことです。一言で言えば福島への負の烙印。(中略)こうしたことを、私たちは風評被害と呼んできました」
「もう一つが差別・偏見の問題です。(中略)県内の通学路を地元の子供たちがゴミ拾いする活動に、『子供を殺す気か』といったメールやファクスが主催者に殺到したなど、例を挙げれば切りがありません。その流れの中で、当然いじめの問題が出てきた。そういう見方をしなければなりません」(『北海道新聞』17年1月14日付)

原発事故後の反原発運動が、被災者の死者数を増やし、いじめや差別の原因にもなっているというのだ。そこで疑問が生じる。

まず、「過剰避難」の規模を人数等のデータで示すことは可能なのか。次に、「過剰避難」による死者数は何人なのか。

それに「過剰」とは、避難する必要がないのに避難したことを意味するのか。その場合、「避難する必要がない」かどうかは、どのような立場の者がどのような基準で判定するのか。そしてその基準は、福島県等の行政機関から同意を得ているものなのか。それとも開沼氏の「偏見」なのか。

当の「県外避難者」男性が開沼氏に反論する。

「開沼氏が言うように、避難者は他人にあおられたから避難したわけではありません。東京大学や大阪大学の教授が『安全』を盛んにあおっていましたが、信用しませんでした。そうした御用学者らはメルトダウンも否定していましたが、私はメルトダウンを危惧して遠距離避難を選択したのです。
遠距離避難者の中には、関東地方など福島県以外から避難した人たちも多数います。開沼氏は全国各地で公演活動を行なう合間に、そうした避難者からも聞き取り調査をしている。にもかかわらず開沼氏は彼らを無視し続けています。多数の『福島県外からの避難者』の存在は“開沼『過剰避難』説”にとって不都合なのでしょう」

架空の人物を“徹底批判”

まだある。

開沼氏は、沖縄県で起きた大阪府警機動隊員による「土人」発言の問題を『琉球新報』紙上で論じた際も、唐突に福島県の話を引き合いに出し、
「今、インターネットで『福島』『子ども』と検索すると『奇形』『健康被害』という関連ワードが自動的に出てくる」「このようなワードを関連させて検索しているのは反原発の立場で福島を応援したいと願う人々である」
と、証拠も示さず反原発運動が“犯人”だと決めつける。そして、
「彼らにしてみれば、原発をやめる理由として『福島』の『子ども』が『健康被害』に侵されているという事実があるのだと思い込みたいのかもしれない」
とする。

開沼氏が言う彼ら――すなわち「奇形」「健康被害」というワードを関連させてネット検索している反原発の人々で、福島の子どもが健康被害に侵されているという事実があるのだと思い込みたい人――とは、開沼氏が作り上げた架空の人物であり、偏見以外の何ものでもない。その上で開沼氏は、
「このようなゆがんだ『正義心』が差別につながるのだということについても、われわれは改めて考えてみる必要がある」
と、大見得を切る(開沼氏の言葉は『琉球新報』16年11月10日付「機動隊差別発言を問う」より)。もはや妄想の次元である。

開沼氏を起用するメディアに「怒り覚える」

こんな調子で反原発運動に対する敵意を剥き出しにする開沼氏に対し、今回、6項目にわたる質問【質問内容は本誌サイトで公開】を同氏のオフィシャルサイトから送ったが、回答期限までに返答はなかった。

そんな開沼氏の“福島愛”は、福島県民からどのように受け止められているのか。

同県中通り在住の女性が語る。

「開沼さんは、反原発の運動をしている人も放射能被害を訴える人も大嫌いなのでしょうね。一方的に『福島は安全だ』と主張するばかりで、幼稚に見える。正直言って、このような人に福島県のことを語ってほしくない」

前出の「県外避難者」男性にも聞いた。

「開沼氏はまるで“福島県民の代弁者”のように振る舞っていますが、迷惑な話です。私をはじめ避難者の多くは、彼の発言に当初は怒りを感じましたが、今では呆れています。むしろ、開沼氏を“福島県民の代弁者”として起用し続けるマスメディアに対して怒りを覚えます」

開沼博氏の「正体」は、不正確な言葉を操り、自らの主観と事実を混同して語る稚拙な論客であり、ルポルタージュの方法も、科学者としての作法も知らないデマゴーグだった。したがって、より本質的な問題は、その正体に気づかずに起用し続けているマスメディアの側にある。猛省を促したい。

(あかし しょうじろう・ルポライター。4月14日号掲載。前編は4月7日号に掲載しています

五輪憲章に違反する? 東京都の『五輪学習読本』の中身とは

東京都教育委員会が作成・配布した『オリンピック・パラリンピック学習読本』(以下、『五輪読本』)・DVD・教師用指導書は、「五輪憲章に違反した誤謬のものである」とし、都教委を訴える会(共同代表=高嶋伸欣琉球大学名誉教授・増田都子元千代田区立中学校教諭。以下、訴える会)の都民110人が3月27日、経費1億6431万円強の返還を求める措置請求(住民監査請求)を行なった。

都教委は昨年4月から、全公立小学校4年生から高校生までの約66万4000人に『五輪読本』を配布し、年間35時間の五輪教育実施を義務化した。『五輪読本』は小学校用が「表彰式の国旗けいようでは、国歌が流されます」、中学校用が表彰式の写真説明で、1位の国の「国歌演奏」時「敬意を表し、起立して脱帽する」と記述。

これに対し訴える会は、「五輪憲章は、表彰式で掲揚・演奏するのは『各NOC・選手団の旗・歌』であり、国旗・国歌ではないとしている」という事実を指摘。

続けて「『(国家権力が)誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制する』のは、『憲法26条・13条……からも許されない』と判じた、1976年の旭川学力テスト事件最高裁判決に照らし、『五輪読本』等の支出は違憲・違法」とし、中井敬三教育長と山口香・遠藤勝裕・大杉覚・宮崎緑・木村孟の各教育委員(木村氏は退任)に対し、連帯して返済させるよう都監査委員に措置請求した。

都庁記者クラブでの会見で、長谷川直彦弁護士は「2000年シドニー五輪で韓国と北朝鮮が(国旗でなく)統一旗を使用した事実」を示した。映画監督の増山麗奈さんは「小5と中3の母親として(五輪教育の)年間35時間は多過ぎる。将来に役立つ基礎学力充実の方に時間を使ってほしい」、音楽家・小野寺通さんは「“君が代”を敬愛せよと教え込むのは外国籍の子どもへの配慮を欠く」と発言した。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、4月14日号)

自民党内で波紋呼ぶ小泉進次郎氏の「こども保険」

教育無償化の財源として、自民党の小泉進次郎農林部会長らが提言した「こども保険」が政官界で波紋を呼んでいる。同党が財源を「教育国債」で賄う案を検討し始めた矢先に、小泉氏が対案をぶつけてきたとみられているためだ。小泉氏らは国債発行には否定的なうえ、思い描く無償化の対象も国債派とは食い違う。ともに教育無償化の推進を打ち出し、財源確保の必要性では一致していても、同床異夢というのが実情だ。

4月5日夕。

「自民党2020年以降の経済財政構想小委員会」の小委員長代行を務める小泉氏は、首相官邸に菅義偉官房長官を訪ね、こども保険について説明した。

「子どもは社会全体で支えていくという、政治の明確なメッセージを発信する必要があります」

こう切り出した小泉氏は、政府内の一部にある消費税増税で財源を調達する案を「税率10%になるのが2019年の予定。無償化のための増税はその先になります。時間は待ってくれません」と退け、菅氏から「しっかり受け止める」との答えを引き出した。

小泉氏らの小委員会が、こども保険構想をぶち上げたのは3月29日。小泉氏は「高齢者に偏る医療や介護は保険があって子育てにはない。世代間公平の観点から画期的だ」と訴えた。続けて「教育国債への対案」との見方は否定しつつ、国債発行を「将来世代へのつけ回しになる」と切り捨てた。

こども保険は少子化をにらみ、「子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクを社会全体で支える」仕組み。本人と事業主が給与の15%程度ずつ納めている社会保険料に、労使とも0・1%ずつ上乗せして保険料を負担する。自営業者らは国民年金保険料に月160円を加えて払う。これで年間約3400億円を確保し、小学校に上がる前のすべての幼児約600万人に月5000円を給付する。保育園の費用に充ててもらうことなどを想定している。将来、保険料は労使が0・5%ずつ負担し、給付を月2万5000円程度に増やすことで、幼児教育や保育の無償化を実現するという。

当面の0・1%アップなら、年収400万円の世帯で月240円程度の負担増。小泉氏は「0・1%を負担と思うような社会なら、とても子どもを社会で育てるなどと言えない」と語る。

【下村氏ら歩み寄りか】

こども保険は00年代初めに厚生労働省内で議論され、原案めいたものはできていた。しかし、保険なのに、子どものいない人や子育てを終えた人は保険料を取られるばかりで見返りがない点をクリアできず、日の目を見なかった。

この宿題は今も解けていない。小泉氏は「子どものいない人も将来、他の人の子どもに支えられる」と主張するものの、公的保険への考え方は自民党の専門家が集う厚生族内でも割れている。有力幹部の野田毅前税調会長は「子育て世代から保険料を集め、その人たちに配るなんておかしい」と周囲に漏らしている。また年金保険料を払い終えた高齢者からも、こども保険料を徴収するか否かなど、詰めるべき点は少なくない。

「(つけ回しの)赤字国債とどう違うのか」。麻生太郎財務相は3月31日の記者会見で、教育国債を真っ向から批判した。これに自民党の下村博文幹事長代行ら文教族は「無償化でより高度の教育を受けた子は、大人になればより多くの税金を払ってくれる」と反論している。当初、文教族は領分を荒らす小泉氏らに不快感を示していたが、ここへ来て「大学までの無償化には5兆円いる。教育国債もこども保険も両方やればいい」と歩み寄る姿勢を見せている。

とはいえ、こども保険は対象を幼児に限定しているのに対し、教育国債は大学などの高等教育の無償化を優先している。そもそも下村氏らの動きは、日本維新の会が改憲項目の一つに教育無償化を掲げ、これに安倍晋三首相が呼応したことがきっかけ。一方、小泉氏は改憲による無償化には慎重だ。こども保険、教育国債ともに実現のメドは立っていない。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、4月14日号)

安倍一強体制下での官僚の堕落(宇都宮健児)

財務省近畿財務局が森友学園に、2016年6月、小学校用地として鑑定価格9億5600万円の国有地を、ごみ撤去費用8億1900万円などを差し引いた1億3400万円で売却したことが問題となっている。

普段は財布のひもを締めるのが仕事と躍起になる財務省が何故このように破格の安値で売却したのか、ごみ撤去費用に8億1900万円がかかるという算定は妥当なのか、何故近畿財務局は交渉経過に関するメモ・記録を破棄してしまったのか、国会の審議経過を見ても国民に納得ができる説明がなされていない。

また、森友学園の小学校設置認可申請に関しても、大阪府の私学審議会が2014年12月の定例会で「認可保留」として継続審議としていたのに、2015年1月に臨時の審議会が開かれ、条件付きながら「認可適当」の答申がなされている。

このように、森友学園の国有地取得や小学校設置認可をめぐっては、「国有地の激安払い下げ」、小学校の「異例のスピード認可」が行なわれているのである。

このような異例の措置がとられた背景に、森友学園問題が「安倍首相夫妻案件」であり、財務省、大阪府などがそろって森友学園に便宜を図ったのではないか、関係する官僚のいわゆる「忖度」があったのではないか、ということが話題となっている。

今の政治は、「安倍一強体制」といわれている。権力者の歓心を買うために安倍首相夫妻の意向を忖度し、森友学園の便宜を図ったのであろうか。

官僚が権力者の意向を忖度する動機には、自らの保身、出世といった私利私欲がある。

憲法15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定めている。権力者におもねり、国民全体の財産である国有地を破格の安値で売却する行為は、憲法15条2項に違反する行為であり、背任罪という犯罪にも問われかねない行為である。

財務省は、官僚の中でも優秀な官僚が集まる省庁といわれている。その財務省で、国民の財産である国有地を破格の安値で売却することに抵抗する勇気、気概のある官僚が1人もいなかったのだろうか。また、森友学園に対する不明朗な国有地売却について内部告発をする勇気、気概のある官僚が1人もいなかったのだろうか。まったく情けないことである。官僚の腐敗、堕落も極まれりということである。

文部科学省でも、法の網をかいくぐって組織ぐるみで斡旋システムを築き、長期間にわたり違法な天下りを行なってきていたことが明らかとなり、歴代の事務次官や人事課長を含む43人が処分されている。ここにも、官僚が国民全体の奉仕者であるという精神を忘れ去り、私利私欲に走るといった官僚の腐敗、堕落が現れている。このような官庁が、人の道を説く「道徳教育」を推進していいのだろうか。

官僚機構の腐敗、堕落を生み出している元凶が安倍一強体制だとすれば、国民に奉仕するまともな官僚機構を確立するためにも、国民が安倍一強体制を倒すしかないであろう。

(うつのみや けんじ・弁護士、4月14日号)

反対集会や声明が次々に 盛り上がる「共謀罪」廃案

「現代の治安維持法を廃案にするぞ」――と、自民・公明両党が衆議院で共謀罪法案の審議入りを強行した4月6日夜、東京都内の日比谷野外音楽堂で、同法案に反対する集会が開かれた。これには、約3700人が参加し、会場を埋め尽くした。民主主義の根底を揺るがす悪法の成立阻止を求め、集会後に国会までデモ行進した。

犯罪を実行していないのに、「話し合い」や「相談」の段階で逮捕・処罰できる共謀罪法案は、日本弁護士連合会が3月31日、中本和洋会長名で「監視社会化を招き、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強い本法案の制定に強く反対する」との声明を発表。また、全国52の単位弁護士会のうち、すでに47会(4月3日段階)が同趣旨の反対声明を発表している。

また日本ペンクラブをはじめ日本消費者連盟、日本労働弁護団、日本出版者協議会、日本劇作家協会等の多くの団体からも、法案反対の声が続々あがっている。

この日の集会には、民進、共産、社民、自由、沖縄の風の各党・会派の代表が参加。自由党の山本太郎参院議員は「森友疑惑、加計疑惑を風化させるため、みんなが大きく声をあげる共謀罪法案を早く成立させようとしている」として、安倍晋三政権の打倒を訴えた。

各界からの発言では、「内心の自由に関わる法律は成立後に必ず変質し、市民の弾圧に向けられる」(ノンフィクション作家の吉岡忍氏)、「自民党が説明しているのはウソばかり。『テロ対策』も『オリンピック』も無関係で、法案が必要とされる根拠がない」(高山佳奈子京都大学法科大学院教授)といった、厳しい批判が飛び交った。

安倍内閣は、4月中の衆議院通過を目指しており、同法案の廃案に向けた闘いは短期決戦となりそうだ。4月23日には「共謀の日」として、全国一斉の街頭行動が計画。それを前後し、各地で反対集会が多数開催される。

(成澤宗男・編集部、4月14日号)

繰り返し公明党に仏罰を(佐高信)

公明党及び創価学会員へ

共謀罪を容認し、安倍昭恵らの証人喚問を自民党と一緒になって阻止している公明党および創価学会に、私は国会前の集会で、こう叫びました。

「自民党に天罰を! 公明党に仏罰を!」

森友ならぬアベ友問題で、「疑惑の3日間」と呼ばれる日があります。2015年の9月3日、4日、5日で、4日に安倍晋三は国会開会中にもかかわらず、大阪の読売テレビに行って「情報ライブミヤネ屋」に出演し、その後、秘書官の今井尚哉と共に、冬柴大が経営する「かき鐵」で食事をしました。

このかき鍋屋は公明党の幹事長で国土交通大臣もやった冬柴鐵三が始めたもので、大は鐵三の二男です。そして、りそな銀行高槻支店の次長を務めた経歴があります。これを、森友疑惑の解明に公明党が及び腰であることと結びつけるのは考えすぎでしょうか。

私が昨年『自民党と創価学会』(集英社新書)を出した時、版元気付で「自公政権に反対する創価学会員代表」から次のような手紙をもらいました。差出人がわからないよう、定規のような四角い字で書いてあります。「身元がばれると、圧力がかかって大変ですから、このような文字に」したのだとか。

私などからは、これだけで創価学会の暗い閉鎖性を見せつけられる思いがしますが、拙著を「ピント外れ」と評する手紙は次のように続きます。

「少なからぬ学会員は私と同じく、次の選挙では自民党は勿論、公明党にも投票しないと言っています。なぜなら池田名誉会長の御指導に反し、大聖人の教えに反し、学会創立精神に反するからです。今の学会首脳部は、先生が完全に意思決定能力を失くしておられるのを良いことに、勝手なことをしています。現場は新聞啓蒙、民音チケット販売、党の資料配布、党の候補者支援葉書などを友人知人に書いてもらうなど、数の目標達成で本当に皆苦労しているのに、大幹部らはその上にあぐらをかき、高い給与、大企業並みの手厚い福利厚生、年金が保障され、下に号令している。勿論、人柄の良い、良識的な幹部もたくさんいます。しかし、モノ言えば唇寒し、上にたてつくことはできません」

「貴殿は多くのページをさいて、浜四津元代表代行のことをヤユし、批判しておられるが、馬鹿も休み休み言えと言いたい。彼女は生真面目に名誉会長の理想を語り、実現しようと命がけで闘った数少ない国会議員でした。しかし学会首脳につぶされた。
現に彼女は退任後、一度も党の会合に出席していません。党大会にも出ていません。それが何をイミするのか? 考えてみよ。
貴殿が彼女を批判しているのを、一番喜ぶのは誰だと思うかね? それは公明党を牛耳っている秋谷、谷川、佐藤らと、彼らにシッポを振ってのし上がってきた太田、うるし原、高木その他殆どの国会議員であることは間違いない。
公明党の議員は学会首脳の意向に反することを言ったりやったりすれば、浜四津のように内外から批判され、追及され、ハズされるんだ、よく覚えておけ! というメッセージになっているんですね」

脱会しない限り首脳部の力はそげない

そして、「貴殿は組織というものが判っていない」と決めつけているのですが、この「代表」を含む学会員こそ、組織がわかっていないと私は思います。この人のように、いくら、“下駄の雪”の言いわけをしても、脱会しない限り、首脳部の力をそぐことにはならないのです。「連合東京」が排外主義者の小池百合子の会の支援を決めましたが、個々の組合員にも連帯責任が生ずることを忘れてはならないでしょう。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、4月14日号)

安倍政権が“忖度”か?──内閣法制局で異例人事(西川伸一)

異例の官僚人事がまた行なわれた。3月31日付で松永邦男・内閣法制局第一部長が定年退官したのである。

内閣法制局には7人の幹部がいる。総務主幹、四つある部の各部長、内閣法制次長、そして内閣法制局長官である。「七人の侍」と呼ばれる(『大森政輔オーラル・ヒストリー』東京大学先端研牧原出研究室、2015年)。全員が他省からの出向者である。昇進ルートは、総務主幹→審査部(第二部〜第四部)のいずれかの部長→意見部である第一部の部長→次長→長官と定式化されていた。

また、内閣法制局には「四省責任体制」なる不文律が存在する(同『大森政輔オーラル・ヒストリー』)。長官と次長には法務省、旧大蔵省、旧通産省、旧自治省いずれかの省の出身者が就く、という意味である。小松一郎長官(外務省出身)の抜擢人事があるまで、破られることはなかった。言い換えれば、これら4省から総務主幹に出向すれば、やがては長官になることを出向者は予測できた。

こうした人事慣行が制度化する起点である吉国一郎長官時代(1972年7月〜76年7月)以降で、第一部長就任者は松永氏までで17人いる。そのうち次長以上に上がれなかったのは彼以外に2人しかいない。1人は病気療養の休職中の86年1月に死亡した前田正道氏(大蔵省出身)。もう1人は第一部長を最後に88年1月で退官した関守氏(農林省出身)である。関氏は上記4省以外からの出向なので、次長以上にのぼる途はそもそもなかった。一方、松永氏は旧自治省出身であるから、当然有資格者である。それなのに第一部長に据え置かれて無念の定年退官となった。これは何を含意するのか。

長官は特別職国家公務員なので定年はない。一方、次長以下は一般職国家公務員のため定年がある。次長は62歳、それ以外の職員は60歳である。それぞれその年齢に達して最初の3月末日が定年退官日となる。もし松永第一部長を既定の出世コースに乗せるのであれば、1956年10月生まれの彼の定年退官日となる今年3月末日までに次長に上げる必要があった。

また、これまで長官になれなかった次長はいない。そこで、その日までに横畠裕介長官が退き、近藤正春次長が長官になる人事も不可欠だった。ちなみに、横畠長官は次長時代の2014年3月末日に定年退官日を迎えた。しかし、病身の小松長官を支えさせるとの理由で政権が同日に定年の1年延長を決めた。その後同年5月に小松長官は退官し、横畠次長が後を継いだのである。

さて、近藤次長は56年1月生まれなので、2018年3月末日が定年退官日。ということは、その直前まで横畠長官の留任が数字の上では可能になった。仮にそれまで続投すれば、横畠氏は4年近い長期在職となる。横畠氏からさかのぼって10人の長官の在職期間をみると、宮礼壹長官(在任06年9月〜10年1月)の3年4カ月弱が最長だ。横畠氏は次長として小松長官を補佐し、次いで長官となって安保法案成立に貢献した。その「ごほうび」として、政権が「忖度」した人事なのだろうか。

今回の人事は3月29日付『読売新聞』がまず報じた。『産経新聞』と『毎日新聞』は31日付だった(『朝日新聞』は未掲載)。この時差も興味深い。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。4月14日号)

♪おれ~俺 俺~詐欺~(小室等)

三月二六日、埼玉で「第12回ゆめ風であいましょう 永六輔さんを偲び『永縁』を紡ぐお話と音楽の集い」(共催/認定NPO法人ゆめ風基金・わらじの会・カタログハウスの学校)が催された。

永さんは、自然災害で被災した障害者を支援するNPO法人「ゆめ風基金」の呼びかけ人代表だった。同基金の全国ネットワークに参加する春日部市の団体「わらじの会」が今回の実動部隊。出演は、オオタスセリ、竹田裕美子、坂田明、中山千夏、李政美、こむろゆい、そして僕。

オオタスセリさんは、
♪おれ~俺 俺~詐欺~(サッカー応援歌)、
♪大飯の原発フル稼働 おじいさんの利権~(大きな古時計)、
♪じれったいじれったい 戦争するとか 派遣とかなら じれったいじれったい 駆けつけ警護も行きたくないわ~ 突然じゃない、みんなそうだわ 私たち、除隊Α(少女Α・中森明菜)、
♪風邪をひいたチキン、土の下に埋めて 渡り鳥が運ぶ 鳥の~インフルエンザ~(地上の星・中島みゆき)、
♪も~りと~もがくえん~払い下げ~ ハッハ~ハ 安倍がなく~ ハッハ~ハ 忖度だ~ ハッハ~(森へ行きましょう)
と、矢継ぎ早の替え歌であっという間に笑いと共感をつかみ取り、喉不調のハスキーが功を奏し、「ストーカーと呼ばないで」がGOOD!

昔ジャズピアニストが配偶者だった千夏さんとジャズ・サックス奏者の坂田明氏。波長は同期して、むやみな誉めそやし無縁の永さん話に花が咲いた後、千夏さんは小室と「老人と海」を歌う。久しぶりの芸能シーンは水を得た魚。

ルーツが済州島、在日二世のヂョンミさんは、東京・葛飾も私の故郷と「京成線」を歌った後、朝鮮民謡「珍道アリラン」と「密陽アリラン」をメドレーで。ヂョンミさんに流れる血が僕らの心を打つ。民謡は強い。

坂田氏は、顕微鏡の中のミジンコが「私を見て!」と言っているとオリジナル曲「Look At Me」の後、広島県呉出身の坂田氏、なんと呉の民謡「音戸の舟唄」をサックスとアカペラで弾き語りならぬ吹き語り。櫓をこぐ仕草を入れながらの歌に舞台が荒波に漕ぎ出る船と化し、ぐいっ、ぐいっと動きはじめた錯覚を覚える名唱。少年期、伝馬船を漕いでいた坂田明に流れる血も、ヂョンミさん同様、僕らの心を打つものであった。

核兵器禁止条約に日本が参加しないとか、大阪高裁が高浜原発再稼働を認めるとか、外ではいやな風が吹いているが、会場内には心地よい風が吹いていた。

夕方、スタッフたちは被災地障害者支援の活動に戻っていった。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、4月7日号)

松井大阪府知事が安倍首相と連携し森友問題を幕引きか

「私学課にも安倍首相にも違法行為はない」と松井一郎大阪府知事。(撮影/横田一)

森友学園の設置認可問題(審査基準の不適合)を調査してきた大阪府は4月6日、私学課長の対応に違法性はないとして懲戒処分を見送り、厳重注意処分に止める甘い調査結果を発表した。審査自体には問題がなかったと結論づけ、5回も府を訪問した財務省近畿財務局の働きかけ(圧力)を不問に付そうとしたものといえる。

松井一郎大阪府知事も同じ立場だった。6日の囲み取材で「近畿財務局が5回訪ねているが、国の圧力、働きかけが私学課長の決定に影響を与えたと理解していいのか」と聞くと、知事は私学課長の違法行為を次のように否定した。

「(近畿財務局の訪問は私学課長の)判断には影響しているけど、違法なことをやっているわけではなくて、私学課もそういう国の意見(2007年の文部科学省の規制緩和の通達)を受けて、『橋下知事時代と僕の時代の大きい教育改革の流れには沿っていこう』という風な判断はあったでしょう」

しかし大阪府私学課の異例の認可について「借地上への校舎建設は違法行為」といち早く指摘した元経産官僚の古賀茂明氏は「(府の)規制基準にはまず『学校の土地は借地ではいけません』と書いてあり、例外的に『運動場とか仮設の物置とかは借地の上に建ててもいい』と書いてある。例外を作る時に『校舎を入れてはダメ』としているのにもかかわらず、大阪府は『借地でいい』と認可をしている。完全に違法です」と断言する。

実際、6日に府教育庁と総務部が発表した「設置認可申請に関する検証報告」は、借地上の校舎建設を問題視。「本件借地を『自己所有』と同じ扱いにすることについて、リーガル(法律的な)チェックをしたか」との問いに、「(担当者の)D課長、C補佐及びB主査ともに、『特に問題あるとの認識はなかったので、確認は行なっていない』とのコメントであった」と回答するやりとりを紹介していた。

「リーガルチェックを怠ったのは国(近畿財務局)の精力的な働きかけの産物」と窺える記載も検証報告書にはあった。私学課職員は「借地が将来的に自己所有となることから問題はない」と判断したのだが、根拠として「近畿財務局からは『平成25年9月以降に適時、来課や問い合わせがあった』」「近畿財務局の照会文書に『取得等要望』に森友学園との記載があった」などを挙げていたからだ。国が精力的に働きかけた結果、府の違法行為を招いたのは明白だ。

さらに、府の聞き取り調査では、国会議員からの問い合わせがあったことも判明。2014年7月まで日本維新の会国会議員団代表だった平沼赳夫・元経済産業大臣(現在は自民党)から「森友学園の理事長に対する府の職員の態度が悪い」というクレームが入ったというのだ。ただし私学課内でも記憶している職員と記憶にない職員がいて、平沼事務所も「連絡を取ったことはない」と否定。

しかし元維新の上西小百合衆院議員は語る。「維新時代13年に平沼先生らから指示されて塚本幼稚園を視察しましたが、異様なのでブログなどで自ら発信することはありませんでした。平沼先生が府に問い合わせをしたとすれば、職員に影響を与えたと思います」「府の検証報告にある『(私学課長の)厳重注意処分』は、不祥事が多い維新の常套手段。身内をかばう時によく使う形だけの甘い処分です」。

【首相と連携し幕引きか】

近畿財務局の国有地払下げと府の私学認可は「ニワトリとタマゴの話」(鴻池祥肇事務所の陳情整理報告書)とたとえられた関係で、両者が足並みを揃えないと実現困難だった。ここに安倍晋三夫妻の働きかけが影響を与えたのか否かが疑惑解明の核心なのに、松井知事は「白」という結論を下した。

7日の囲み取材で「私学課の違法行為を認めなかったのは、近畿財務局や安倍首相に疑惑追及が及ばないようにするためか」と聞いたが、松井知事は「違法行為はない」という主張を繰り返した。

籠池前理事長の長男佳茂氏はツイッターで「安倍先生と松井知事の連携プレー」と指摘したが、幕引きもこの2人の連携プレーと疑いたくなるのだ。

(横田一・ジャーナリスト、4月14日号)

雇用環境改善だけでは消費は増加しない(高橋伸彰)

現在の安倍政権が誕生してから政府の景気判断(『月例経済報告』)で、「回復している」という総括判断が示されたのは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった2014年1月から3月までの3カ月にすぎない。翌4月には「緩やかな回復基調が続いている」と判断が下方修正され、その後は今年3月に至るまで36カ月連続の「回復基調」、すなわち「回復の途上にある(道半ば)」が続いている。

「回復している」と「回復基調」の間にどのような違いがあるのかを一般論として論じるのはむずかしいが、安倍政権下の景気に焦点を当てるなら個人消費が鍵を握っている。というのは政府が個人消費が「増加している」と判断したのも、14年1月から3月までの3カ月にすぎないからだ。つまり日本の景気が「回復している」という結果を出せずに、いつまでも「回復基調」という道半ばで足踏みしているのは、GDP(国内総生産)の6割を占める個人消費が増加しないからである。

一方、政府の景気判断によれば雇用情勢は15年12月以降、16カ月連続して「改善している」。この3月末に公表された「労働力調査」でも完全失業率は2.8%と22年ぶりの低水準となり、昨年11月以降すべての都道府県で有効求人倍率が1.0を上回っていることと併せ考えれば、雇用の需給が逼迫していることは間違いない。

それにもかかわらず雇用情勢の改善が、賃金上昇を通して個人消費の増加に波及しないのはなぜだろうか。政府・日本銀行は五右衛門風呂の例えを使って、釜は熱くなっているが、釜の湯が温まるまでにはなお時間を要していると嘯くが、ここまで湯が冷えたまま(消費が増加しない)なのは、そもそも湯を温められるほどに釜は熱くなっていない(賃上げが不足している)からではないか。

実際、『朝日新聞』は失業率が22年ぶりに低水準となったと報じる4月1日付の紙面で「人手不足感が強まっているにもかかわらず、賃金の伸びは鈍い」と指摘、『日本経済新聞』も同日付で「人手不足が賃金や物価上昇に波及する経済の好循環は実現していない」と報じている。安倍首相は「官製春闘」で賃上げを実現すれば消費も増えると目論んでいたようだが、今春闘の失速ぶりをみれば当てが外れたのは明らかだ。

筆者は本誌への寄稿(「永遠の『道半ば』に潜む安倍首相の真意」、2017年1月20日号)で、累計約340兆円の「失われた賃金」こそが消費不調の主因だと述べたが、その責任は経営側だけでなく積極的な賃上げ闘争を怠ってきた労働組合にもある。言うまでもなく、雇用の需給が逼迫したからといって市場メカニズムの作用で賃金が自動的に上がるほど現実は甘くない。賃上げは労働組合が対立覚悟で経営側と交渉して勝ち取るものであり、そのために団体交渉権やスト権行使などの闘争手段が法律で認められている

連合は一部大手組合の賃上げをもって春闘を総括するのではなく、すべての労働者が失われた賃金を奪還するまで間断なく闘争を続けるべきだ。そうでなければ安倍政権の命運が尽きる前に、連合に対する労働者の信頼が失われてしまうのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。4月7日号)