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東京外環道トンネル工事、住宅街陥没から1年 
広がる被害と住民のいらだち

丸山重威|2021年10月8日4:42PM

10月2日、トンネル建設現場直上で地盤状況を調べる作業員。調査は毎日数回行なうが、内容について問われても一切答えない。(撮影/丸山重威)

東京・調布市の住宅街で昨年10月18日、直径5メートルもの穴が空いて大騒ぎとなった東京外環道のトンネル工事現場――。事故から1年を前に、現場の掘進工事は一旦中止しているものの、被害はますます拡大し、トンネル直上に限った住宅には「立ち退き→取り壊し→更地化→地盤強化工事」への交渉が始まり、被害住民のいらだちも高まっている。一方、事業の承認・認可の無効確認・取消裁判とあわせ、東京地裁での工事差し止めの仮処分請求では、国など事業者側が住民側の主張に十分な反論ができないまま、仮処分としては異例の長期裁判になっている。

陥没事故の後、付近のトンネル上の地中では、最大で新幹線車両がすっぽり入ってしまうほどの大きさの三つの空洞が発見され、付近の地上でのひび割れなどのほか振動、低周波などによる住民の健康被害も報告されている。その修復と原因究明や事故の再発防止策が改めて問題になっている。

事業者の国土交通省と東日本、中日本両高速道路会社(NEXCO)は、内部の専門家会議で事故原因や再発防止策を検討。3月の報告書で(1)掘削マシンが土を吸い込みすぎて空洞ができ、陥没(2)周辺に地盤の緩みが広がっている――などは認めたが、事故のメカニズム、責任、被害の詳細(特に健康被害)に触れないまま、壊れた住宅などの補修を始めた。さらに陥没や空洞の前後のトンネル直上の住宅40~50世帯を仮移転させて住宅を取り壊し、「土壌強化剤注入による地盤強化を図る」と一方的に発表した。

重機での地盤補修工事は始まっていないが、すでに数戸が転居して空き家が点在、「虫食い住宅街」になりつつある。掘削工事こそ中断したものの、トンネル内の作業や地下からのボーリングなどが行なわれ、住宅の壁などのひびの拡大や新たな地盤の沈下・隆起も見られ、住民は低周波音の被害を訴えている。地震が起きると揺れが大きく伝わる。事業者は、陥没以後全線で止めていたシールドマシン7基のうち、一部地区の2基を7月に稼働させた。

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