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性的画像が拡散される 「デジタル性暴力」増加
「ぱっぷす」が報告会

宮本有紀|2021年10月1日9:14PM

スマートフォンで性的画像記録の被害を生んではいけないということを社会に訴えるキャンペーン「#porNOphone」のロゴ。人物写真はAIが作成したもの。porNOphoneとは、porn(ポルノ)、phone(携帯電話)、no(ダメ)を組み合わせて作った言葉。

SNSの普及やデジタル技術の発達で誰でも簡単に画像や映像が拡散できるようになり、盗撮されたり交際時に撮られたりした性的画像が知らないうちに拡散されるなどの「デジタル性暴力」と呼ばれる被害が年々増加している。意に反してインターネット上に拡散した性的画像記録の削除要請活動を行なうNPO法人「ぱっぷす」が8月29日、現状や課題についてオンライン報告会を行なった。

アダルトビデオ(AV)への出演を強要された女性の相談を受けていた「ぱっぷす」は、その延長として2017年から画像削除要請活動を始め、19~22年度は独立行政法人社会福祉医療機構の助成を受けて削除要請事業を行なっている。外出自粛が要請された昨年は、4月以降、被害相談が急増したという。

警察につながるインターネット・ホットラインセンターにも「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列」や「児童ポルノ公然陳列」を訴えることができる。また、今年3月に「ぱっぷす」が開設した「デジタル性暴力被害者支援センター」ではネットに流出した性的画像記録を個人で削除要請できる方法を公開し、技術面でのサポートも受け付けている。ただ、削除したい画像や動画とURLを自分で探し出して行動しなければならないのは精神的に負担だ。「ぱっぷす」のスタッフは「どうにかして消したいと思っている画像を、自分で探して第三者に送るのは非情に苦しい」と話す。自分の代わりに無料で削除要請をしてもらえる「ぱっぷす」への相談が増えている一因だろう。

削除要請が多かったサイトは紙幅の都合で上位3位のみの掲載。

相談者はAV、ゲイビデオなどの無断転載やリベンジポルノ、児童ポルノなどの被害者からで、女性が多いが男性もいる。具体的には「元彼と付き合っていた頃に撮られた裸の写真が誰に見られているか分からなくて怖い」「販売停止したAVが無料動画でいっぱい残ってしまっている」「交際時に撮られた性的な動画が出回ってしまった」「風俗店のパネル写真が、辞めた後も出回ってしまっている」「メンズモデルと勧誘されたが実際は男性同士の絡みのビデオの撮影で断れなかった」などの相談があったという。画像を撮られたのは10年ほど前というケースも複数あり、長年、不安のまますごしている人が多いことも判明した。

「ぱっぷす」では、20年4月~21年3月で2万2735回の削除要請を実施。児童ポルノやリベンジポルノの削除率は100%だったが、強要されたAV出演などで商業的に拡散されたものを含めると削除されたのは一部削除をあわせて58・7%。サイト数としては計約1万48サイトに削除要請をしたが、毎日のように新しいアダルトサイトを発見するので確認作業が増え、同じサイトでも削除に応じなくなったりするので、労力と効果がつりあっていない印象だ。

削除に応じないサイトも26・2%あり、交渉した事業者の中には「俺たちは(稼ぐ)場所を提供してやっているんだ」と主張される場合もあったという。「お金に困っているだろ? 助けてあげるよ、という感じで、性を買ったり消費したりすることを正当化しているということも、相談や削除要請から見えてきた」と交渉したスタッフ。また、「デジタル性暴力についての法整備が発展途上で、逮捕されるリスクも少ない。そのため、性的搾取に手を染める人が一向に減らないうえに新規参入がすごく増えていると感じる」とも話す。

ぱっぷすの金尻カズナ理事長は「肖像権の侵害、人格的権利を根拠に削除要請を行なっているが、権利としては弱い。性的画像記録に関しては人格的な権利がもっと認められる法整備が必要。画像は世界に拡散し、サーバーが海外にあることなどから国際連帯も求められる」と指摘。今後の活動として「私たちはまず中国や台湾、韓国の団体と連携して有効な解決方法を模索している」と話し、「何もしなければ社会構造は変わらない。これは解決可能な問題だと私たちは確信している。私たちの世代で性的搾取に終止符を打ちませんか」と訴えた。

※ぱっぷすのURLはhttps://www.paps.jp/

(宮本有紀・編集部、2021年9月17日号)

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