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アスリートの性的画像被害
女性選手の尊厳を守れ!

小川たまか|2021年7月2日10:56PM

アスリートの性的画像被害や盗撮問題について関心が高まっている。5月23日にはオンライン上でシンポジウム「盗撮・性的画像被害からアスリートを守る〜現状と課題〜」が行なわれ、弁護士や記者、アスリート経験者らがそれぞれの知見を語った。

被害数は競技種目によっても違いがあり、陸上競技の場合は短距離走や跳躍種目が狙われやすいという。日本陸上競技連盟(日本陸連)・法制委員会の工藤洋治弁護士は「短距離走のスタート地点付近で選手が腰を上げた瞬間を狙う」「跳躍の場面で股間を狙う」といったケースが多いことを挙げ、さらに「選手の画像に卑猥な文言を掲載したり、体液をかけた動画・画像をネット上に掲載する」「ライブ配信の応援メッセージ欄に性的書き込みをする」などの陰湿な被害実態を報告した。

 

オンラインシンポジウムの様子(撮影/小川たまか)

このような被害に対して日本陸連は、日本オリンピック委員会の関係諸団体と連携し、昨年11月に共同ステートメントを発表。その後、約半年間で約1000件の情報提供があり、関連団体へのアンケート結果によれば回答した37団体中、20団体が過去に盗撮疑いなどを警察へ相談していたことがわかった。不審な行為に気づいたスタッフが調べたところ、10人ほどの撮影者がその場にいたケースや、注意すると慌てて逃げ出したケースなどがあったという。

2008年と12年の2回、オリンピック出場した経験を持つ元水泳選手の伊藤華英さんは、現役時代に「どのカメラでどう撮られているかわからないから気をつけなさい」と言われていたことを明かした。「高速水着」と呼ばれたレーザー・レーサー(※現在は着用禁止)が流行した際、締め付けが強いためレースが終わってすぐに肩の紐を下げたところ、その様子を週刊誌に撮影・掲載された。「何がキャッチーなのかわからなかった」と困惑した経験を語った。

この問題を取材している共同通信の鎌田理沙記者は、「撮影されたくなければ露出の少ないユニフォームを着ろ」といった意見があることに触れ、「選手へのリスペクトに欠けた乱暴な話」「(露出の多い)セパレート型のユニフォームでもそうでないものでも、どちらも尊重されるもの。アスリートや女性の権利を尊重する時代が来るべき」と発言。他のパネリストからも、「選手に対策を強いる雰囲気や、選手の自由を奪うことはおかしい。なんら非難されることではない」(工藤弁護士)、「被害者の落ち度をあげつらう論調がはびこっている。加害者ではなく被害側に行動変容を求めるのはおかしい」(三輪記子弁護士)といった意見が述べられた。

また共同通信の品川絵里記者は「この問題はマスコミのあり方と強く関連する」と、これまでメディアがアスリートのルックスやプライベートなど競技と関係ない部分を配慮なく強調してきたことに触れ、「マスコミも批判を受け止めて変わっていく必要がある」と話し、元毎日新聞記者の経歴を持つ上谷さくら弁護士も「(性暴力被害の取材には)女性記者ばかり来る。幹部が男性ばかりの新聞社では性被害が問題だという認識が広がりづらいのではないかと実感している」と同調した。

(小川たまか・ライター、21年6月4日号)

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