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マイナンバーカードと健康保険証一本化が延期に 
医療現場に反対根強く

小石勝朗|2021年5月7日4:58PM

新システム導入に反対して東京保険医協会が作ったポスター。(撮影/小石勝朗)

マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする「一体化」の本格実施が延期になった。3月4日から54施設で試行し、同月下旬からの運用を予定していたが、10月になりそうだ。

政府は「健康保険組合など保険者のデータ入力ミスが原因」と説明する。しかし、コロナ禍で疲弊する医療現場には新システム導入への反発が根強く、予定通り開始していれば混乱は不可避だった。

新システムでは、患者が医療機関や薬局の受付でマイナンバーカードをリーダーにかざすと、オンラインで即座に保険資格が確認できるという。本人かどうか、顔認証でカードの顔写真と照合する。患者が同意すれば医師は過去の投薬・健診情報を閲覧できる。

だが厚生労働省によると、保険者による個人番号などの誤入力は一時約3万件にのぼり、3月下旬でも数千件あった。個人情報を他人に見られるおそれもあった。

「医療情報は間違えたら命にかかわるのに、誤入力をチェックしておく仕組みがなかったことに驚く」と東京保険医協会の吉田章副会長。カードリーダーが電子カルテとつながるため、診療情報漏洩の危険が高まるのも懸念材料だ。

医療機関に無償提供されるカードリーダーの申込率は3月21日でも45%で、政府目標の「6割稼働」に届いていなかった。患者がマイナンバーカードだけ持っていっても、過半数の医療機関では受診料全額をいったん自己負担することになりかねなかった。

政府は2022年度末までに、すべての医療機関でマイナンバーカードを使えるようにする計画で、今の保険証の廃止も視野に入れる。カードがないと受診できなくなると危機感を煽り、取得を促しているとの批判もある。

今回の延期で「22年度末までに全国民がマイナンバーカードを持つ」という政府の構想も見直しを迫られそうだ。9月予定のデジタル庁発足を前に痛手に違いない。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2021年4月16日号)

 

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