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12年前に贈賄罪で罰金刑の88歳元市長が再審請求 
「自白は虚偽」と主張

小石勝朗|2020年11月11日5:23PM

再審請求後に記者会見に臨む元天竜市長の中谷良作氏。(撮影/寺澤暢紘)

高校生の孫の調査書を改ざんしてもらった謝礼に校長に現金を渡したと供述し、2008年に贈賄罪で罰金70万円が確定した静岡県天竜市(現浜松市)の元市長、中谷良作氏(88歳)が10月16日、浜松簡裁に再審を請求した。唯一の証拠とされる自身の自白は「すべて虚偽だった」と主張している。

中谷氏は、孫の大学への推薦入学にあたり成績をかさ上げしてもらった謝礼として、市長退任後の06年と07年の2回、県立天竜林業高校(当時)の校長だった北川好伸氏(72歳)に校長室で計20万円を贈ったとされた。08年9月に逮捕される前からの任意の聴取と合わせ、略式起訴されるまで55日間にわたり取り調べを受けた。

再審請求で新証拠としたのは、取り調べ状況を記載した8通の捜査報告書と、それに基づく浜田寿美男奈良女子大学名誉教授(心理学)による供述の鑑定意見書だ。

捜査報告書には、中谷氏が逮捕後も自白と否認を行き来する様子がつづられており、浜田氏は「(長期間の調べによる)取調官との人間関係に抱き込まれながら、何とか否認を貫こうとして、しかし最終的には罰金を選ぶ方向に落ちていった形跡がはっきり残されている」と分析。「虚偽の自白と考えるのが妥当」と結論づけた。

再審請求後の記者会見で中谷氏の弁護人の杉尾健太郎弁護士は、警察が自白だけを調書にして否認の事実を隠していたと批判し、「取調官が自白を誘導していたことが捜査報告書で分かる」と指摘した。中谷氏は「汚名を消して人生を終わりたい」と語った。

一方の北川元校長は一貫して無罪を主張したが、調査書改ざんは校長の指示だったとする教員の証言もあり、加重収賄と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で懲役2年6月執行猶予4年が確定した。北川元校長も再審請求して冤罪を訴え続けており、中谷氏の再審請求の動向が影響しそうだ。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2020年10月30日号)

 

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