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美々卯がスラップ訴訟 
東京店舗一斉閉店・従業員解雇報道に社長激怒

北健一|2020年10月15日6:12PM

9月15日、東京美々卯本社前で解雇撤回を訴える元従業員ら。(撮影/北健一)

うどんすきの老舗として名高い美々卯(本社・大阪市)とその社長・薩摩和男氏が筆者(北)を訴えた名誉毀損訴訟が波紋を広げている。筆者が執筆した記事が対象で、原告は被告の筆者と記事を掲載したダイヤモンド社、編集長に1100万円の支払いと記事削除、謝罪を求めている。

問題の記事はウェブ媒体「ダイヤモンド・オンライン」に掲載の「『美々卯』一斉閉店の裏に再開発利権か コロナ便乗解雇の深層」(6月26日付)。美々卯から暖簾分けした東京美々卯が今年5月20日に解散、全6店を閉鎖し約200人の従業員を退職、解雇させた事件の背景を探っている。同社は無借金で、雇用調整助成金も申請することなく解散を決めた。

訴状には薩摩氏が「平気で従業員の生活の糧を奪い、その人生を踏みにじる人物である、という仮にこれが真実であれば会社経営者として万死に値する恥ずべき汚名を着せられた」とある。薩摩氏らは他方で東京美々卯解散や退職・解雇は問題なかったと主張している。問題のないことへの関与がなぜ「汚名」になるのだろうか。

9月16日、大阪地裁で第1回口頭弁論が開かれた。新型コロナ感染防止で一人置きに座る形の傍聴席は関心を持った市民でいっぱいに。薩摩氏は法廷に姿を見せなかったが、被告側の意見を受け、金地香枝裁判長は次回以降も公開の口頭弁論とすることを決めた。

弁論後のミニ報告集会で美々卯元店長が出汁づくりの苦労にふれると、交響楽団でバイオリンを弾く音楽ユニオンの齊藤清さんは「いい味といい音とは共通する。同じ職人として解決を望む」。不当配転と闘う連帯ユニオン・十三市民病院分会の大西ゆみさんは「職人さんは素晴らしい。私も問題が解決したら美々卯に食べにいきたい」と会場を沸かせた。批判封じのスラップ訴訟に見える提訴が却って連帯の輪を広げた格好だ。次回弁論は11月18日13時10分から大阪地裁807号法廷の予定。

(北健一・ジャーナリスト、2020年9月25日号)

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